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嘘神 [日本の作家 ま行]


嘘神 (角川ホラー文庫)

嘘神 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 三田村 志郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2009/10/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
愛する弟を失ったコーイチは失意の日々を送っていたが、高校で初めて友達と呼べる仲間たちと出会った。しかし、ある朝目覚めると、5人の仲間と出口のない部屋にいた。「嘘神」の声が非情なゲームの始まりを告げる。ルールは7つ。しかし、嘘神の言葉にはひとつだけ嘘がある。与えられた水と食料はわずか。仲間の命を奪って脱出するのか、それとも……。若き新鋭、驚愕のデビュー作! 第16回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

日本ホラー小説大賞の受賞作は、ずーっとがんばって読んできていたのですが、この「嘘神」の前の年にちょっとくじけてしまっていました。
そのまま日本ホラー小説大賞の作品は読まなくなるかなぁ、なんて思っていたのですが、「嘘神」が本屋さんに並び始めると、なぜだか気になって、買ってしまいました。ずいぶん積読にしてしまいはしましたが、引力があったのです。ゲーム的設定の小説って、結構好きなんですよね。
それにしても、あらすじを読んで不思議な思いにとらわれないでしょうか?
このような設定だと、どうしても「バトル・ロワイアル」 〈上〉 〈下〉 ( 幻冬舎文庫)を思い出しませんか?
「バトル・ロワイアル」 〈上〉 〈下〉 は、第5回日本ホラー小説大賞の落選作(変な言い方ですが)。
荒俣宏「意図的なのでしょうが、とにかく語り口から何からほとんどテレビのパロディになっていて、それでいて四十二人の生徒が一人一人殺し合う構成というのは、やっぱりちょっと問題がありすぎるんじゃないかって」
高橋克彦「今の時期にこういう中学生が殺し合いをするような作品に賞を与えてしまっては、やっぱりホラー大賞のためには絶対マイナスだと思う」
林真理子「いくらホラーでおもしろくても、こういうものを書いちゃいけない」
と、さんざんないわれようで落選です。
その後、映画化されて話題になりましたね。

「嘘神」の選考委員も同じこの3人。不思議でしょ? 高校生6人が殺し合うですけどね。人数が少ないからOKなのでしょうか(笑)。
荒俣宏「長編『嘘神』が、すべてを救った。稀に見る快作である」
高橋克彦「『嘘神』の斬新さも際立っていた。著者の若さを思えば驚異的な才能と言っていい」
ベタほめ。林真理子はコメントしていませんが...

さて、内容ですが...
嘘神が設定するルールに従って、登場人物が動きます。
「今お前たちは現実から離れた場所にいる。元の世界に戻りたければ生き残れ。最後の一人になれば現実に帰してやろう。時間制限はない。
私はここに七のルールを定めた。聞いておけ。
一つ、ルール説明後、お前たちに人数分の水を与える。ただしそのうち一本は塩基性。そこには命を奪う毒が含まれている。
二つ、同じく人数分、ただしすべて毒のない食料を与える。
三つ、人の命を奪ったも者に、安全な水と食料を与える。
四つ、この世界で何かを賭ければ、それは私が取り立てる。
五つ、生きている者が二人になれば、私はもう一度現れる。
六つ、生き残った者の望みであれば、一人だけ生き返らせてやる。
七つ、私の言葉には、一つだけ嘘がある。」
追いつめられていく、というか、自ら勝手に追い込まれていく登場人物たちの姿はたいへん興味深く読みました。
嘘神が仕掛けた罠という部分はあまり好みではなかったのは残念ですが、自らすすんで破滅に向かっていく人物が、物語全体の結構に結びついているあたりも、考えたなぁ、と感心しました。
おもしろかったですよ。
ただ、ラストが気になっています。なんだか、既視感があるんですよね。こういう設定の小説、読んだことがあるような気がします。新井素子の作品にも似たものがありましたが、それとは別に、もっともっと近い作品があったと思うんです。思い出せないんですけどね。
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chokusin

いわゆるソリッド・シチュエーション・スリラーに相当するんでしょうか。
未読なので気になったというラストがどんなものか分かりませんが、記事を拝読していて『クリムゾンの迷宮』を連想しました。おそらく違うでしょうけど。
by chokusin (2013-06-03 22:22) 

31

chokusinさん、ご訪問&コメントありがとうございます。
そうですね、ソリッド・シチュエーション・スリラーに該当するんだと思います。
こういう設定の小説や映画、結構ありますよね。
『クリムゾンの迷宮』も読んでいるのですが、おもしろかったことだけ記憶にあって、内容はあまり覚えていません...今後確かめてみます!
by 31 (2013-06-07 23:51) 

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