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スノーホワイト [日本の作家 森川智喜]


スノーホワイト (講談社文庫)

スノーホワイト (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
「真実を映し出す鏡」をもつ反則の名探偵・襟音ママエは、舞い込む事件の真相は分かるが、推理は大の苦手。ある事件が縁で顔を合わせた探偵・三途川理が、窮地に陥れようと策を練っていることも知らず――。おとぎ話のような愛らしい世界で、鋭い論理バトルが展開される、第十四回本格ミステリ大賞受賞作。


「キャットフード」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続く第2作です。
今回の設定は白雪姫、と紹介するよりは、〈なんでも知ることのできる鏡〉がミソというべきですね。
この鏡、よく知られている存在ですが、ミステリの道具として活用した例、なかったような気がします。nice!

二部構成になっていまして、第一部は、〈なんでも知ることのできる鏡〉で真相を知ってから、説明をでっちあげる、というミステリを裏返したようなストーリー。
肩慣らしであると同時に、三途川とママエが出会うきっかけともなります。
この設定で連作を書いてみてほしいですね。途中で飽きるかな?

そして第二部は、三途川が悪者側(?)についてママエを亡き者にしようとすることへの攻防戦です。
この第二部が本書の読みどころかと思います。
攻防戦、と書きましたが、実際のところ知恵を巡らせるのは三途川サイドだけで、ママエ側は大してなにもしませんが、それでも鏡をどう使うかをどんどん深めていくのは、面白かったです。
ただ難点は、鏡がだんだん万能になっていってしまうところ。
質問に対し事実(真実?)を答える、というのを超えて、いろんなことが出来てしまいます。
鏡の機能が第一部できちんと説明されていない。何ができて、何ができないのか、読者には示されないまま進んでいってしまうので、あれれ、と。
たとえば悪者側が「ママエを首尾よく始末するにはどうしたらいいか?」と鏡に聞くことはできない(聞いても回答が得られない)ように設定されていると思われるのですが、はっきりとは書いていない。書いてあることから類推するとたぶんそうだろうな、とわかるくらいにはなっていると思いましたが、それであれば一層、後半で展開される鏡の能力にはびっくりします。
この点を受け入れて、メルヘンチックな世界でのおとぎ話と捉えると、その範囲内であれこれと策謀をめぐらせるミステリとしてたいへん楽しく読みました。

森川智喜、ずいぶんいろいろとへんてこなこと(褒め言葉です)を繰り出してくれそうです。
今後も楽しみな作家です。




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