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血か、死か、無か? [日本の作家 森博嗣]

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
イマン。「人間を殺した最初の人工知能」と呼ばれる軍事用AI。電子空間でデボラらの対立勢力と通信の形跡があったイマンの解析に協力するため、ハギリはエジプトに赴く。だが遺跡の地下深くに設置されたイマンには、外部との通信手段はなかった。一方、蘇生に成功したナクチュの冷凍遺体が行方不明に。意識が戻らない「彼」を誘拐する理由とは。知性が抽出する輪環の物語。


Wシリーズの第8作です。
今回の舞台はエジプトです。
今回は、「人間を殺した最初の人工知能」。
確かに、これはエポックメイキングな出来事でしょう。
ウォーカロンにせよ、コンピューターにせよ、人間に近づけば近づくほど、人間を殺しやすくなっていくのでしょうねぇ。変な言いかたですが。

話の展開が、ここへきて遅くなったような気がします。

「僕は、空を見上げた。綺麗なブルーだ。空というのは、つまり宇宙なのだが、実際には、その手前にある空気の層に明るさがあって、宇宙は見えない。真実というものも、これと同じだ。クリアに見える層でも、また希望によって照らされた層であっても、真実を隠してしまうことがある。
 夜になれば見えるではないか、と思いついた。
 なるほど、正義の輝かしさを忘れることが、真実を見通す方法なのかもしれない。正義を捨てるとは、どんな選択だろうか?
 何故か、マガタ・シキ博士のことを連想していた。」(92ページ)
なんて、マガタ・シキ博士の本質?に迫るようなモノローグもあります。

一方で、
「遠い昔に、そういったことが行われていたと、言い伝える者はおりません。私たちは、過去を伝えない。なにも書き残しません。そうすることで、今という時を、確かな強さをもって生きることができます」(155ページ)
ナクチュの人びとの暮らしぶり、生き方をカンマバが話すシーンですが、これはこれで正しい生き方なんでしょう。

こういうのが交錯しつつ、森博嗣作品のあちこちとの連関が、一気に表に出て来始めています。
だから、展開が遅くなったと感じるのかもしれません。
このシリーズも残りが少なくなってきました...


英語タイトルと章題も記録しておきます。
Is It Blood, Death or Null?
第1章 血を選ぶ Choosing blood
第2章 死を選ぶ Choosing death
第3章 無を選ぶ Choosing null
第4章 選ばない Not to choose
今回引用されているのは、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」 (ハヤカワepi文庫)です。



<蛇足>
「銃を仕舞った方が良い、マドモアゼル」後部座席にモレルがいった。
「誰がいるの?」ウグイは、外を見たまま聞いた。
「悪魔妃」モレルが答える。
「今の発言を、逆再生すると、血か死か無か、になります」デボラが囁いた。(273ページ)
うーん、わかりません!





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コメント 2

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>逆再生すると、血か死か無か
分からないとあったので考えてみましたが、森氏は回文や頭の体操をよくネタにされます。
Chi ka Si ka Mu ka ⇔ Akuma Kisaki =悪魔妃というジョークです。
by お名前(必須) (2019-11-02 23:57) 

31

お名前(必須)さん

コメントありがとうございます!
なるほど~。すごい。
最後の(最初の?)Chという子音は消えてしまう(あるいは効果ある音としては聞こえてこない)ということですね(後に母音がないので)。

by 31 (2019-11-03 00:52) 

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