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密室蒐集家 [日本の作家 あ行]

密室蒐集家 (文春文庫)

密室蒐集家 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
鍵のかかった教室から消え失せた射殺犯、警察監視下の家で発見された男女の死体、誰もいない部屋から落下する女。名探偵・密室蒐集家の鮮やかな論理が密室の扉を開く。これぞ本格ミステリの醍醐味!物理トリック、心理トリック、二度読み必至の大技……あの手この手で読者をだます本格ミステリ大賞受賞作。


第13回(2013年度)本格ミステリ大賞受賞作。
「柳の園 一九三七年」
「少年と少女の密室 一九五三年」
「死者はなぜ落ちる 一九六五年」
「理由(わけ)ありの密室 一九八五年」
「佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年」
の5話収録の連作短編集です。
 
密室ミステリばかりを集めた贅沢な短編集なのですが、密室蒐集家という謎の人物が出てくるところがポイントですね。
タイトルに年代が書かれていますので、最初から最後までの間に七〇年ほどの時間が経っているのにもかかわらず、同じ人物という設定です(たぶん)。
外見はちっとも歳をとらない。
「理由(わけ)ありの密室 一九八五年」でも、「彼の外見はどう見ても三十歳前後だ」(212ページ)と書かれています。
この密室蒐集家という非現実的な設定をとった趣向(の意図)がよくわかりませんでした。
時代背景がバラバラだから(時代を現代にしたら成立しない作品がありますので)、一人の名探偵ではこの作品の探偵役はつとまらないことは理解できますが......別の探偵を立てればよかったんじゃないかな? なんて思ってしまいました。
まさか、「理由(わけ)ありの密室 一九八五年」で披露される密室講義=犯人が意図的に密室を作る理由に貢献するためじゃないでしょうね......いやいや、ありえますね(笑)。

冒頭の「柳の園 一九三七年」はオーソドックスな感じですね。
オーソドックスすぎて「柳の園 一九三七年」を読んだ段階でこの短編集どうかなぁ、と思った人がいらっしゃったとしても、ぜひ続けて読んでください。、
いろいろな密室のバリエーションが描かれています。

いちばん感心したのは、2作目の「少年と少女の密室 一九五三年」。
もう、作者・大山誠一郎の苦労が偲ばれて、不自然だ、とか、無理やりだ、とか責める気には全くなりませんでした。
こういう無茶な綱渡り、結構好きです。

無茶といえば、「理由(わけ)ありの密室 一九八五年」もかなりの無茶で、楽しめます。
上で密室蒐集家の外見の描写を引用した際にも触れたように、密室を作る理由に焦点をあてた作品で、その謎解きそのものはとても楽しく読んだのですが、最後に明かされるダイイングメッセージ(ネタバレにつき色を変えています)は、いくらなんでも無理すぎでしょう。
これまた、こういうの好きですけれども。

その2編にはさまれた「死者はなぜ落ちる 一九六五年」もかなりのものですね。
この犯人、頭よすぎです。いろんな意味で。

最後の「佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年」は、これらに比べるとおとなしい。
密室のトリックは前例あってもまあまあだと思うのですが、個人的には動機がちょっと......

密室ミステリばかりを集めた短編集なんて贅沢だし、密室もそれぞれバラエティに富んでいるし、本格ミステリ大賞受賞も納得という感じでした!



<蛇足>
「少年と少女の密室 一九五三年」に、新宿署が出て来ます。
舞台設定は一九五三年。
でも、新宿署ができたのは一九六九年で、それ以前は淀橋署と呼ばれていたようです(このあたりはWikipediaで確認しました)。
昔、佐野洋の「推理日記」で新宿署というのはなかった、というのを読んだ記憶があったので調べてみました。
物語の本筋とはまったく関係ありませんが、時代考証ミスですね......



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