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夕暮れ密室 [日本の作家 ま行]

夕暮れ密室 (角川文庫)

夕暮れ密室 (角川文庫)

  • 作者: 村崎 友
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
遅刻厳禁! 明日、晴れるといいね――文化祭前夜、そう言い残した少女は、翌朝、密室状態のシャワールームで死んでいた。少女は、栢山(かやのやま)高校バレー部マネージャーにして男子生徒憧れの的、森下栞。遺書が発見され自殺として処理されそうになる中、疑念を持ったバレー部員やクラスメイトの、真実を追う推理が始まる。立ちはだかる二重密室と若者ならではの痛みと殺意。横溝正史ミステリ大賞選考委員が奮い立った、傑作青春ミステリ。


この作品、単行本が出たときから気になっていたんです。
作者の村崎友は、第24回横溝正史ミステリ大賞を「風の歌、星の口笛」 (角川文庫)で受賞しデビューした作家ですが、この「夕暮れ密室」 (角川文庫)は第23回の候補作。北村薫と綾辻行人の強い推挽があった、と知ったからです。
この文庫本の帯にも、

第23回横溝正史ミステリ大賞<落選作>
「しかし、どうしても本にして欲しかった」
選考委員|北村薫、綾辻行人

と書かれています。
落選作、とはなかなかの書きっぷりですが(笑)。
ちなみに、第23回は受賞作なし、という結果で、だったら受賞作にしとけばよかったのに、と思いました。
そうです。
もともとこういう作風が好きだ、というのもありますが、「夕暮れ密室」、とても面白かったからです。
(もっとも応募作品からかなり修正がされているのでしょうけれども)

巻頭に紀田順一郎の言葉が掲げられています。
「密室に夕暮れが訪れた。
 閂のかかった分厚い扉を
 こじあけようとする者は既にない。」

タイトルにも密室とありますし、この引用なので、密室に焦点が当たっています。
この密室が面白いのですよ、とても。
まず、「奇蹟」と作中で言われる(偽りの)トリックがすばらしい。爆笑もの。もう、なんか、小栗虫太郎を思い出しましたよ(笑)。
そしてそのあと明かされる本物のトリック。これが本当にすばらしい。こっちは違うトリックなのですが、柄刀一を思い出しました。
いや、本当に、なぜ受賞作にしてしまわなかったのだろう?

小道具や舞台設定の使い方も巧みですよね。
ぼやかして書くしかないのですが、プールとか、バレー部とか、文化祭(作中では、黎明祭と呼ばれています)とか、携帯とか。
そうそう遺書のくだりもおもしろいですよね。こっちは、日下圭介を思い出しました。あっ、これ、ネタバレ? 同じものではないし、日下圭介も作品数が多いからわからないですよね。

もうこれだけでも十分な気がしますが、それに加えて、学園ミステリ、青春ミステリなんですよね。
冒頭の森下栞視点の第一章がとても素晴らしくて、ワクワクして続きを読んだら、なんと第二章でその森下が被害者になる、というサプライズ。
犯人の動機(?) に至るまで、ぼくは楽しく読めましたね。
あらすじに「若者ならではの痛みと殺意」とありますが、少々エキセントリックな部分も含めて、愛すべき作品だな、と感じました。



タグ:密室 村崎友
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