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赤い糸 [日本の作家 か行]


赤い糸 (幻冬舎文庫)

赤い糸 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 吉来 駿作
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/10/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
大学生の修平は、心を寄せる同級生の美鈴に頼まれ、香港郊外での秘密の儀式に同行、言われるがまま赤い糸を体に巻く。死と契る行為とも知らずに……。帰国後、参加者たちは、切っても切れない赤い糸の幻覚に悩まされる。死から逃れるには自分の体を切断するしかない。ついに修平が、彼女に斧を振り下ろす。赤い糸の伝説が恐怖を生む青春ホラー。


2021年11月に読んだ8冊目の本です。
作者の吉来(きら)駿作は「キタイ」(幻冬舎)(文庫化にあたって「ラスト・セメタリー」 (幻冬舎文庫)と改題)で2005年に第六回ホラーサスペンス対象を受賞してデビューした作家です。
「キタイ」の作風が気に入っていたので気になる作家ではあったのですが、寡作なうえになかなか文庫にならず。
ようやく購入できたのがこの作品です。

ジャンルでいうとホラーです。

どんな難病でも癒してしまう儀式。
ただし、その儀式の参加者はその話を誰にもしてはならない。もしすると死んでしまう。

よくある設定といえばよくある設定なのですが、そこに赤い糸という小道具が加わって、強くイメージがわきます。
そしてこの設定を土台にして、ベースはホラーながら、ミステリらしい伏線やロジックがしっかりと仕込まれています。
軽いタッチで書かれていますが、こういうホラー、いいですね。
(理に落ちない方が純粋にホラーとしては怖くてよいかもしれませんので、ホラーファンの方には受けないかもしれませんね)

軽いタッチといいつつ、ラスト近くである主要登場人物が真情を吐露するのですが(282ページから)、この内容が強烈で、考えさせられました。
ここに焦点を当てると、まったく別の印象をもたらす作品になったことでしょう。
ネタバレになるので、色を変えて、自分への備忘のために以下に引用しておきます。
「健康なくせに、目的もなく、ふらふらと生きてる奴がな、おれは憎くてたまらないんだ。健康な体で生まれてきたのに、お前らは、何もしない。命を無駄にするだけだ。与えられた命の価値に気づかず、それを活かそうとしない。おれに言わせれば、お前らは、ゴミだ。それも、最悪のな。おれは、お前らみたいなゴミを、一人残らず殺したいんだ」「お前、おれを見て幸せを感じたろ?」
「誰も彼もが、おれを見て自分の幸せを嚙み締めやがる。あんな風に生まれなくて良かったと。あんなおかしな歩き方をしないで、自分は幸せだとな。おれに前に立った連中の顔に、見る見るうちに幸せが浮かんでくるのがわかるんだよ。おれを見て、可哀想だとか、がんばってと声をかけてくれるがな。そういう言葉の裏で、お前らは幸せを噛み締める。腹の底でおれを笑って、幸せの甘い香りを楽しむんだ」

現状吉来駿作の作品はあと2作出版されているようですが、文庫化されているのは1冊で時代小説のようですね......


タグ:吉来駿作
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