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捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書 [日本の作家 か行]


捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書 (講談社文庫)

捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書 (講談社文庫)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
念願叶って捜査一課の刑事に抜擢された七夕菊乃は元アイドルという経歴のせいでお飾り扱い。天才心理学者草辻蓮蔵とFBI出身の鬼才深海安公が繰り広げる頭脳戦に巻き込まれてしまうことに。初めて挑む密室殺人事件捜査は一体どうなる!? 「小説でしかできないことをやりました」と著者自ら語る傑作初長編。


2022年12月に読んだ5冊目の本です。
帯には
「ミステリ漫画界からの新しい才能!」「記念すべき初小説!」
という文字があり、「Q.E.D.」や「C.M.B. 森羅の博物館」などのシリーズで楽しませてくれているマンガ家加藤元浩による長編ミステリ。
マンガを追いかけているので、この初小説にも期待していました。

まず、主人公である七夕菊乃の設定がポイントなんだと思います。
元(地元)アイドルで、美形で、運動能力も抜群で、行動的で。これ、水原可奈&七瀬立樹ラインの人物設定ですね。絵が浮かびます。
でも、文庫カバーの絵は、加藤元浩自身のものではないのですよね。
このシリーズでは小説家として振る舞う、ということかもしれませんし、後進に道を譲る、ということなのかもしれません。大人(たいじん)ですね。

この菊乃が語り手となって物語は進んでいくのですが、この語り口がちょっと馴染みづらい。
自分のことはわからないとよく言いますが、菊乃も
「美人とかモテてるとかの自覚がまったくない」(39ページ)
と評されたりしています。こう言われているのを聞きながら、
「よくは分からないが、二人が仲良くしていたので、深く考えるのはやめにした。」(860ページ)
と続くのですね。これ一人称で語るのはつらくないでしょうか?
さらに、菊乃の設定は、鈍いだけのワトソン役というわけではなく、諸々気づくことは気づいていくようになっています。こういう設定の人物を視点に据えるのは、見抜けること、見抜けないこと、読者に知らせたいこと、知らせたくないことの線引きを考えると、とても難しいのではないかと思います。
そんな菊乃ですが、自分の気持ちも含めて、説明しすぎています。
「内心、大はじゃぎだ。捜査を大ベテランから学べる絶好の機会でもある。もっとも伏見主任にしてみたら新人のお守りだろうが。」(209ページ)
確かにその通りなんだろうけれど、こう書かれてしまうと読む側は白けてしまう部分が出てきますよね。なんだか若い新人刑事が語り手というより、世知に長けたおじさん・おばさんみたいな印象を受けてしまいます。
またシリーズの導入として背景の説明が必要だから、ということかとは思うのですが、前置き的な部分が長く、なかなか本題の事件にはいらない。162ページでようやく、という次第です。

そしていよいよ語られる事件の内容が......
これ、犯人(や物語の大枠)の見当がつかない読者、いるでしょうか?
細かいトリックが、新奇性はないものの、ふんだんに盛り込まれていて楽しいのですが、読者の方が先に全体を見通してしまっているので、つらいですね。

印象論になって恐縮なのですが、意外なことに、全体が古めかしい。
長々とした導入部もそうですし、犯人の設定もそう。
初小説ということで意気込まれたのでしょう、いろんな要素を盛り込みすぎていて窮屈な感じもそうですね――たとえば警察の内部の確執などは、このシリーズ第一作では菊乃は気づかなかったことにして、実は舞台裏にこういう確執があった、とシリーズの続刊で明かすという展開にした方がすっきりしたと思います。
懐かしい雰囲気とさえ、言ってしまってよいかもしれません。

期待したのと違う方向に行ってしまっている感じはありますが、加藤元浩ファンとしてもう少し追いかけてみたいです。




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