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憂国のモリアーティ 1 [コミック 三好輝]


憂国のモリアーティ 1 (ジャンプコミックス)

憂国のモリアーティ 1 (ジャンプコミックス)

  • 作者: 三好 輝
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/11/04
  • メディア: コミック


<裏表紙あらすじ>
時は19世紀末、大英帝国最盛期のロンドン──。
この国に根付く階級制度に辟易するモリアーティ伯爵家家長子・アルバート。孤児院から引き取ったある兄弟との出会いによって、世界を浄化するための壮大な計画が動き出す。名探偵シャーロック・ホームズの宿敵、モリアーティ教授の語られざる物語の幕が開く──!!


ついに船便が到着しました!
日本を出てから約2ヶ月。結構時間がかかりましたね。
でも、はるばる日本からイギリスまで海の上をやってきたのかと思うと、なんとなく感慨深い。
本、読めていないのに、船便でも本を送ってきてしまっています。
そんななかコミックも2シリーズだけ持ってきていまして(といいつつ、船便の段ボール全部開けきっていないので、どこかにまだ紛れ込んでいる可能性は否定できませんが)、そのうちの一つがこの「憂国のモリアーティ」 (ジャンプコミックス)です。

#1 緋色の瞳 (The scarlet Eyes)
#2 グレープフルーツのパイ一つ (The one grapefruit Pie)
#3 橋の上の踊り子 (The Dancers on the Bridge)
の3話収録です。

シャーロック・ホームズの宿敵であるモリアーティを主人公に据える、というのは小説で例がないではないですが、若かりし頃から、しかもコミックで、というのが冒険ですね。
巻末のおまけまんがに、ホームズ正典のなかで、モリアーティに触れられているのはわずか6作品と書かれていますが、逆に意外と多いな、という印象ですね。ライヘンバッハの滝にホームズと一緒に落ちた印象が強すぎるので、それ以外の作品にあんまり出てきたという感じがしません...
ホームズの正典もまったくといっていいほど読み返していませんので、この程度の印象しかもっていない人間の感想だと思って受け止めていただければと思います。

まず、モリアーティって、こんな人物でしたっけ?
人殺しはばんばんやっちゃうのですが、路線としては義賊というか、正義の味方っぽいんですよね。
「命の価値は同じであるはずなのに
 誰しもが平等に幸せになる権利があるはずなのに
 この国にはそれが無い…
 人々に呪いをかける階級制度
 それにより人の心は汚れ歪み
 悪魔が生まれる
 …ならばその逆も然り
 悪魔が消え去れば人の心は澄み渡り呪いは解ける
 この国はきっと美しい」
こう信じて、打倒階級制度で、忌まわしい貴族やその取り巻きたちを成敗する。
イギリス版必殺仕事人?

階級社会が薄れた(日本のようになくなったわけではなく、イギリスにはきちんと残っています!)現代の視点から見ると、平等というのは「正しい」わけで、悪の権化だったモリアーティが正義の味方に早変わり
おそらくオリジナルのモリアーティの設定はこうではなかったと思います。
その意味では、この作品、表紙に「原案/コナン・ドイル」と書いてあるのは、なかなか大胆ですね。

この留保をクリアしてしまうと、あとは快調ですね。
ちょっとモリアーティの考える手口がやわい感じがしていまいますが、虐げられているものを救うための殺人、というのは勧善懲悪として受け入れられやすいですし、逆にこのコミックから正典に入っていく人もいるだろうと思うと(世間はミステリファンが思うほどホームズを読んでいません)、これはこれでありかな、と思いました。
ミステリ的にはトリックにもう一工夫も二工夫もしてほしいところですが、それはないものねだりでしょうね。



<蛇足>
第2話のタイトルの英語版 The one grapefruit Pie というのは...どうなんでしょうか?
The one ~?
<2018.7.12追記>
正典に、「オレンジの種五つ」(The Five Orange Pips)という作品があるので、その連想かと思われますが、あちらには The をつける理由があったと思われます。
一方、こちらの「グレープフルーツのパイ一つ」には The をつける理由が見当たりません。


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