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幽霊はお見通し [海外の作家 は行]


幽霊はお見通し (創元推理文庫)

幽霊はお見通し (創元推理文庫)

  • 作者: エミリー・ブライトウェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/05/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
新年早々、またも殺人事件の捜査を任されることになったウィザースプーン警部補。裕福な婦人が殺されたのは、交霊会から帰宅した直後のことだった。今回も主人を陰で助けようとするジェフリーズ夫人と使用人一同だが、このところメイドと馭者の仲が険悪で、捜査に支障が出かねない。奇しくもその原因も、交霊会がらみで!? 単純そうで手ごわい事件に探偵団が挑むシリーズ第3弾!


「家政婦は名探偵」 (創元推理文庫)
「消えたメイドと空家の死体」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾です。

こういってしまうと身も蓋もないですが、ウィザースプーン警部補のぼんくらぶりに拍車がかかっていますね。ジェフリー夫人たち使用人探偵団がいなければ、事件などひとつも解決できないのではないでしょうか......
死体を見るのがいやな刑事といえば、日本では赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズの片山刑事ですが、このウィザースプーン警部補のだめだめぶりは際立っています。気立てはよさそうなんですけど。

前作「消えたメイドと空家の死体」 が解決してから約二ヶ月、事件がなくて使用人たちが退屈している、という幕開けです。
しかし、スコットランドヤードの刑事が2ヶ月も殺人事件を担当していないなんて、なんと牧歌的な時代だったことでしょう。そんなものだったんでしょうか?
「十一月からこっち、なにも面白い事件がないんだもの」というメイドのセリフもありますから、殺人事件はあってもジェフリー夫人たちの手を煩わす必要のない殺人事件だったということでしょうか......

で、待ちに待った事件は降霊会絡み。
降霊会帰りの女性が自宅で射殺。宝石が盗まれていたので、最初は強盗殺人かと思われたのですが、ジェフリー夫人の慧眼で(強盗殺人でないことを見抜くのは慧眼というほどのものではない気がしますが)強盗が偽装であることが判明し......
被害者に対して殺害の動機を持つ人がちゃんと複数用意されていまして、謎解きものの結構が整っています。
真相そのものは平凡でしたが(この真相を意外と思う人は少ないと思います)、使用人という立場で、しかもウィザースプーン警部補に気づかれないように、という制約があるので、さて、どうやって使用人探偵団が事件を解決するのか(そしてそれをどうやってウィザースプーン警部補に知らせるのか)、という興味で楽しめます。
とするとこのシリーズは、事件を解決することそのものよりも、読者にとっては事件の次のステップが見当ついても、果たしてどうやって使用人探偵団がその道筋をたどるのか、そういう視点で楽しめる異色のミステリなのかもしれません。


今回は、アメリカ人のルティに仕える執事であるハチェットが新キャラクターとして探偵団に仲間入り。このハチェット、人脈もあって頼もしく、探偵団のメンバーとしてなかなか楽しそうです。今後のシリーズにも登場してほしいですね。




原題:The Ghost and Mrs. Jeffries
作者:Emily Brightwell
刊行:1993年
訳者:田辺千幸






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