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にぎやかな落葉たち [日本の作家 た行]


にぎやかな落葉たち (光文社文庫)

にぎやかな落葉たち (光文社文庫)

  • 作者: 真先, 辻
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/02/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
北関東の山間にたつグループホーム「若葉荘」。そこには元天才少女小説家の世話人と、自在に歳を重ねた高齢者たち、車椅子暮しの元刑事らが暮らす。だが穏やかな日々は、その冬いちばんの雪の日、密室で発見された射殺死体の出現によって破られる。十七歳の住み込みスタッフ・綾乃は、一癖も二癖もある住人のなかで隠された因縁を解き明かし、真相に迫ることができるのか!?


辻真先作品を取り上げるのは、「日本・マラソン列車殺人号」 (光文社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)以来なんですね。
新作の作品数が減ってきているのは、作者が高齢というのもあるかもしれませんが、いろいろなシリーズの幕引きを次々とされていますし、絞っておられるのかもしれませんね。
辻作品もかなり大量に読んできていますので、ちょっと寂しいですね。

この「にぎやかな落葉たち」 (光文社文庫)は老人を対象にしたグループホーム「若葉荘」を舞台にしています。
「若葉荘」という名前なんですが、入居者から「落葉荘」と皮肉られている、という設定で、これからの高齢化社会に向けていろいろと注目点の多い舞台で、名前以外にもあちこちに作者の問題意識が伺われます。

ミステリとしてのポイントは、いつも通り、確かに押さえられていて、安心して読めます。
あらすじでは、射殺、と書かれていますが、射殺は射殺でも、拳銃によるものではなく水中銃で撃ちこまれた銛で殺されるというものです。
この水中銃の扱いとか、天井に張られた貼り紙の扱いとか、ポイントポイントで、ああ、そうか、とツボを突かれます。楽しい。
どうしてこのタイミングで殺人を実行したか、という点もきっちり。ラストの畳み方もなるほどな、と思いました。

やはり辻真先の作品はおもしろいですね。
文庫化されていない本もたくさんあるんですよね。もったいないなー。


<おまけ1>
個人的に強烈だったのが、172ページからの昔のいじめシーン(?)。
あまりの内容にちょっと耐え難かったです。
よく病気になりませんでしたね...そこはホッとしたのですが......それにしても。

<おまけ2>
この作品、単行本のときのタイトルが「にぎやかな落葉たち 21世紀はじめての密室」で、文庫化の際に副題が省かれています。
単行本が出たのは2015年で、決して21世紀に入ってすぐ出版されたわけではないので、単行本のときと文庫化のときで情勢が変わったようにも思えないのに、どうして??

<おまけ3>
本書の章題
第一章の、『若葉荘』の人々、から始まって、第八章の、それがなぜいま? まであるのですが、そのうち第二章の、落葉荘?の不穏、だけが7文字で、その他は8文字なんですよね。
(『』もそれぞれ1文字と数えています)
せっかくだから第二章も8文字にすればよかったのに、と思ってしまいました。

<蛇足1>
ここで起きた事件だから、一所懸命なんですよ。(277ページ)
当たり前のことながら、一所懸命と正しい日本語が使われていて安心できます。

<蛇足2>
野次馬根性が骨がらみの世耕はへこたれなかった。(285ページ)
「骨がらみ」 ぼくはいつも使わない語で、見慣れない語です。意味はわかるのですが、為念、辞書で意味を確認しました。
(1)梅毒が全身に広がり,骨髄にまでいたってうずき痛むこと。また,その症状。ほねうずき。
(2)悪い気風に完全にそまっていること。


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