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殺意の対談 [日本の作家 は行]


殺意の対談 (角川文庫)

殺意の対談 (角川文庫)

  • 作者: 藤崎 翔
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/04/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
人気作家・山中怜子と、若手女優・井出夏希。新作映画の原作者と主演女優の誌上対談は、表向きは和やかに行われたのだが、笑顔の裏には忌まわしい殺人の過去が……。同様に、ライバル同士のサッカー選手、男女混成の人気バンド、ホームドラマの出演俳優らが対談で「裏の顔」を暴露する時、恐るべき犯罪の全貌が明らかに!? ほぼ全編「対談記事+対談中の人物の心の声」という前代未聞の形式で送る、逆転連発の超絶変化球ミステリ!


2023年4月に読んだ6冊目の本です。
「神様の裏の顔」 (角川文庫)(感想ページはこちら)で横溝正史ミステリ大賞を受賞した藤崎翔の長編第二作。

目次を見ると
「月刊エンタメブーム」 9月号
「SPORTY」 ゴールデンウィーク特大号
「月刊ヒットメーカー」 10月号.....
というように、雑誌名が並んでいます。
ページをめくると
「 この小説は、ほぼ全編にわたり『雑誌の対談記事+対談中の登場人物たちの心の声』という、たいへん奇抜な形式で書かれています。
 慣れるまでは多少読みづらいかと思いますが、どうか最後までお付き合い頂けますと幸いです。」
という著者のことばが載っています。
この形式の成否やいかに、ということかと思います。

著者も書いているように、確かに読みにくい(笑)。
ただ、最初の「月刊エンタメブーム」の対談者である作家・山中怜子と女優・井出夏希が二人とも殺人経験者、というところでおやっと思います。

次の「SPORTY」では、がらりとかわって、日本代表の座を狙うサッカー選手の対談となり、あれ? と思うのですが、次第に登場人物につながりがあることがわかってきます。
とすると、その後も様々な人物が出てくるのですが、登場する人物たちのつながり具合、絡み具合を予想して楽しむ作品ということなのでしょう。

この点では、かなり入り組んで凝った人間関係が用意されていますし、途中サプライズもそこそこ仕掛けてあって、楽しんで読めました。
ただ、いかんせん、やはりこの形式は読みにくいですし、対談中にしては心の声が長すぎるのが興ざめ。こんなに長々と述懐していたら対談が成立しないですよ。
対談でなければできない仕掛けというのもなかったと思われますし、対談と心の声ということで、ホンネとタテマエ、あるいは表の顔と裏の顔の落差を楽しめるということはありましたが、別の形式にした方がインパクトがあったのではないかと思います。
しかし、こういう変なことを考える作家は大好きなので、いろんな作品を書いてみてほしいです。


<蛇足>
「登録された目的地や行き先の履歴を見ると、青山の『Paul Smith』とかいう服屋と、新宿の『BAR NEW COMER』とかいう飲み屋に、特によく行っているようだった。どっちも気取った名前で、俺は店にまで腹が立った。」(74ページ)
実在するブランド名が使われていますが、Paul Smith って気取った名前なんでしょうか?



タグ:藤崎翔
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