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映画:落下の解剖学 [映画]

落下の解剖学 1.jpg

映画「落下の解剖学」の感想です。

いつものようにシネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したサスペンス。夫が不審な転落死を遂げ、彼を殺害した容疑で法廷に立たされた妻の言葉が、夫婦の秘密やうそを浮かび上がらせる。メガホンを取るのは『ヴィクトリア』などのジュスティーヌ・トリエ。『愛欲のセラピー』でもトリエ監督と組んだザンドラ・ヒュラー、『あなたが欲しいのはわたしだけ』などのスワン・アルローのほか、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツらが出演する。

---- あらすじ ----
ベストセラー作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、夫と視覚障害のある11歳の息子(ミロ・マシャド・グラネール)と人里離れた雪山の山荘で過ごしていたが、あるとき息子の悲鳴を聞く。血を流して倒れる夫と取り乱す息子を発見したサンドラは救助を要請するが、夫は死亡。ところが唯一現場にいたことや、前日に夫とけんかをしていたことなどから、サンドラは夫殺害の容疑で法廷に立たされることとなり、証人として息子が召喚される。


話題の映画ですが、どうやら鑑賞の仕方を間違えてしまったようです。
事前にあらすじ的なものを読み、

夫が転落死。
現場となった自宅にいたのは妻サンドラ。
愛犬と散歩に出ていた子供ダニエルが発見する。
夫婦仲がよくなかったと推定され、サンドラが殺人犯として裁判に。

こういうストーリー展開なのでミステリー映画かな、と思って観てしまいました。
この映画、謎はあってもいわゆるミステリー映画ではありませんでしたね。

まずこの裁判のあり方に驚愕。
証拠らしい証拠がほぼないのに、サンドラを犯人と決めつけて裁判にかけ、裁判中の検察の主張も物証なくイメージのみ。サンドラの書いた小説まであたかも証拠であるかのように取り上げ、裁判中に読み上げる始末。

これ、映画だからでたらめな裁判を描いたのでしょうか?
それともフランスではこういう裁判が一般的なのでしょうか?
推定無罪、疑わしきは被告人の利益に、と言う法理もなさそうです。
裁判の進め方も極めて異常なものと映りました。証人尋問のさなかに、不意に被告に質問を投げかけたり、異議申し立て以外にも弁護士や検察官が簡単に口をはさんだり。

こんな裁判ですから、俳優さんたちの名演とあいまって、サンドラが無罪となるか有罪となるか、とてもドキドキ、ハラハラできます。
映画に引き込まれた、と言ってもよいでしょう──でも、こういう引き込まれ方は......(苦笑)。

裁判の途中でサンドラの夫婦のあり方や息子ダニエルとのかかわり方がどんどん明らかにされていき、そこが映画としてもっとも重要なパートであるので、裁判シーンがないと困るのですが、もうちょっと裁判の中身はなんとかならなかったものか。

裁判の行方を決定づけるのは、あらすじにもある通り息子ダニエルの証言なのですが、これまた証拠となるものというよりは、ダニエルから見た印象論で、最後までびっくり。

こんな状況で有罪を宣告されたら、たまったものではないなぁ。

明らかに、ミステリー映画として観たのがいけないのだ、とわかります。
ミステリー映画ではない、として考えると、このダニエルの証言の重みの印象が一層強くなります。
裁判によるサンドラの有罪・無罪を左右するのですから、重要な証言であることは変わりないのですが、この証言に至るにダニエルの下す決断は、果たしてサンドラがやったのかどうかとは別に、これまで語られてきていた家族のありかたと、裁判で急にそれをあかされて困惑せざるを得ないダニエルの心情に大きく影響を受けるもので、重い、重い決断です。

実際にサンドラが殺したのかどうか、はっきりしないまま結末を迎えるのですが、個人的には最後の犬のシーンを見て犬を信じてみようか、というところです。
いろんなかたの感想を見てみたいですね。



製作年:2023年
製作国:フランス
原 題:ANATOMY OF A FALL
監 督:ジュスティーヌ・トリエ
時 間:152分


<2024.3.30 ポスターの画像を追加しました>



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