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さよならドビュッシー [日本の作家 中山七里]


さよならドビュッシー (宝島社文庫)

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2011/01/12
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
ピアニストからも絶賛! ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。第8回『このミス』大賞受賞作品。


この作品の最大の長所は、なんといっても音楽(ピアノ)シーンだと思います。
全身大火傷のあとですぐにコンクールを目指す、という設定そのものはちょっとやりすぎかな、と思いますが、引き込まれました。音楽に詳しい人やピアノをやっている人から見てどうかというのはわかりませんが、小説としてのリアリティは十分にあると思います。スポ魂(スポ根?)ドラマのような展開をしますが、「努力と根性」で押し切るのではなく、きちんと理論というか説明が付されていて、納得しながら読み進むことができます。主人公がコンクールを目指すモチベーションも、行ったり来たりしながら、ストーリーにきちんと織り込まれています。
文章が漫画的だったり、型どおりだったりというところが気にならないでもないですが、判り易く、読みやすいですし、語り手が女子高生という前提だから、と捉えることもできます (贔屓の引き倒しでしょうか? それにしては古臭い表現が多いところはこの想定を裏切っていますが... 真偽は作者の次作を読んで確認したいと思います。ただ、会話の部分はこの弁護が成立しないので、説明調すぎたり説教くさかったりというところは今後修正していってもらえればと)。総合的にみて、この作品に限っては、必ずしもマイナスとはいえないと思います。
ミステリとしてはどうかというと、平凡と言えば平凡かもしれません。弱い部分も多々あります。
しかし、この作品は、登場人物が少ないので犯人の予想がつきやすいという弱点を抱えてはいますが、かくも登場人物が限られた中ではよくできていると言っていいのではないでしょうか? 登場人物の位置づけを相応に設計図を引いて書かれた気配がして、満足度大です。
個人的には、「このミステリーがすごい!」大賞というと、ミステリというよりはエンタテイメントという語がふさわしいような作品がほとんどという印象だったことに加えて、昔あった大映ドラマのような展開をするので、この作品もミステリ的興趣は少なめの作品なんだろうな、と勝手に思い込んで読んでいましたが、ミステリならではの狙いをもった作品で、満足しました。警戒を怠っていたので (油断しすぎだよ、と突っ込まれそうですが)、作者が用意した趣向を気持ちよく楽しむことができました。スポ根ストーリーもその伏線として機能している、といえば、まあ、いくらなんでも誉めすぎでしょうけど...
帯が「妻夫木聡さん(俳優)絶賛!」 どのくらい効果があるのかわかりませんが、ミステリが売れるというのはいいことですので、効果が高いことを願います。


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