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作者不詳 ミステリ作家の読む本 [日本の作家 三津田信三]


(講談社文庫)
  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/12/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
杏羅(あんら)町──。地方都市の片隅に広がる妖しき空間に迷い込んだ三津田は、そこで古書店〈古本堂〉を見いだす。ある日、親友の飛鳥信一郎を伴って店を訪れた彼は、奇怪な同人誌『迷宮草子』を入手する。その本には「霧の館」を初め、七編の不思議な作品が収録されていた。“作家三部作” 第二長編、遂に降臨!<上巻>
謎と怪異は、同人誌『迷宮草子』から溢れでるように──。尚も読み進める三津田と飛鳥信一郎の周囲の異変は激しさを増していく。解き明かさなければ破滅が待つ。二人は“本”の恐怖から逃れることができるのか。最終話「首の館」の扉が開く。著者の綴る異界の源がここにある。驚愕のホラー&ミステリ完結編。 <下巻>

三津田信三による作家三部作の第2作目になります。第1作目は「忌館 ホラー作家の棲む家」 (講談社文庫) で、第3作目は2巻もので、「蛇棺葬」 (講談社ノベルス)「百蛇堂」 (講談社ノベルス)です。
古書店で入手した妙な同人誌「迷宮草子」を読むと怪異に巻き込まれる。個々の作品の謎を解かないと、怪異は収まらない。「迷宮草子」の以前の持ち主は行方不明になっている...怪異に巻き込まれてしまったのか。
ひたひたと迫りくるような恐怖感が、本書の一番の長所だと思います。よくある趣向といってもいいとは思うのですが、それでも十分恐ろしい。
作中の謎を合理的に解かないと怪異が消えない、という点で、ある意味理に落ちているのに、ちゃんと怖いのはなぜなのでしょうか? どうすれば怪異を鎮めることができるかわからない、という部分がなく、理詰めで逃げられるのに、そして各話きちんと解決をつけているのに、それでも怖い。
「作中の謎を合理的に解かないと怪異が消えない」という設定が、単に主人公たちに同人誌を読み進ませるための仕掛けにとどまらず、プラスアルファの効果を読者に与えていて、作者の腕、なのだと思います。
ただ、凝り過ぎたのか、ラストのラスト、ちょっとやり過ぎ感が漂ってきます。同人誌の、思わせぶりな目次を使った趣向も、おもしろいと思うと同時に、下巻P422からの解釈を前提にすると食い違いが出てくるんじゃないかなぁ、と心配にもなります。
と難癖をつけながら、このやり過ぎ感漂うラストの部分がないと、作中作が現実に影響を及ぼしてくる、という趣向である以上、この作品の終わりがあっけなくなってしまうことも事実で - だって、全部の謎を解いて、めでたし、めでたし、では、それこそ同人誌を読みました、というだけの話になってしまいます -、難しいところですね。
個人的には、この作品十分「あり」だと思いました。
ホラーとミステリーの融合として、力のこもったいい作品だと思います。
はやく「蛇棺葬」 「百蛇堂」 文庫にならないかな。
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