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フレンチ警部とチェインの謎 [海外の作家 F・W・クロフツ]


フレンチ警部とチェインの謎 (創元推理文庫 106-5)

フレンチ警部とチェインの謎 (創元推理文庫 106-5)

  • 作者: F.W.クロフツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1971/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
快活な青年チェイン氏はある日、ホテルで初対面の男に薬を盛られ、意識を失う。翌日自宅に戻ると、家は何者かに荒らされていた。一連の犯行の目的は何か? 独自の調査を始めたチェイン氏を襲う危機また危機。いよいよ進退窮まったとき、フレンチ警部が登場し事件の全貌解明に乗り出す。本書は冒険小説と謎解きミステリの妙味を兼ね備えた、クロフツ初期の輝かしい傑作である。

いつものことなので裏表紙のあらすじを上に引用しましたが、表紙を開いたところにある扉のあらすじが、なんか勢いがあっていいんです。
「プリマス市のホテルでチェイン氏を襲ったパークスと名乗る男は、何者なのか? また呼応するように自宅を荒らした者の目的は何か? 文字と数字と曲線を囲む無数の輪で構成された暗号表は、何を物語るのか! 殺人、誘拐、脅迫そしてパークス一味がねらうチェイン氏の秘密とは何か! チェイン氏は事件の究明に奔走したが行きづまった。やがて事件はフレンチ警部の手へ移り、本格的な捜査が始まる。処女作『樽』から数えて第六作目。フレンチ警部ものとしては第二作目にあたるクロフツ初期の輝かしい傑作。」
? とか ! が力強く、なんだか、紹介している人に力が入っているのが伝わってきます。
フレンチ警部ものの構成としても変わっていて、前半にはフレンチ警部は出てきません。主人公である青年チェインの冒険物語になっているのです。「冒険小説と謎解きミステリの妙味を兼ね備えた」というのは、冒険小説の妙味とは何か、という命題の答えによってイエスともノーとも言えてしまうと思いますが、危機が迫ってもどこかおっとりしている昔懐かしい冒険小説の味わいは感じることができます。
フレンチ警部が出てきてから、謎解きが始まるのですが、326ページの暗号(?)の出来は、よく作ったなぁと関心はできるもののなんだか中途半端ですし、一つのフラスコから注いだ二杯のお酒の片方だけにどうやって薬を入れるのかという謎解きも、図入りで説明してくれているのですが、たぶん「なんだかなぁ」という感想に落ち着きそうですし、ミステリ部分の仕掛けがとってもしょぼくって、笑ってしまうくらいなんですが、それでも憎めないというか、楽しく読んでしまいました。
作者は一所懸命だったんだろうと思うんですが、どことなく余裕を感じるというか、読者として鷹揚に構えたくなるような、不思議な作品です。暗号を解読した結果たどり着く地点も、再び冒険小説テイストになるというお茶目さ。だからか、訳者のあとがきも「本文庫に収録されたクロフツの作品もすでに二十編を越えたが、なかでも、この作品はクロフツの新しい試みのひとつとして、読者の思い出に残ることが期待される」なんて、褒めてるんだかどうだかよくわからないコメントで締めくくられています。
出来はいいとは言えないのだと思いますが、でも個人的にはなかなかよかったと、印象に残る作品でした。

ところで、タイトルはちょっといただけないですよね。
チェインって、主人公の名前ですよ。このタイトルだと、チェインという人物が謎だらけ、とかいうことかと思ってしまいます。原題もそのままなのですが、チェインに謎があるわけではないんだけど...

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