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バイロケーション [日本の作家 は行]


バイロケーション (角川ホラー文庫)

バイロケーション (角川ホラー文庫)

  • 作者: 法条 遥
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/10/23
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
画家を志す忍は、ある日スーパーで偽札の使用を疑われる。10分前に「自分」が同じ番号のお札を使い、買物をしたというのだ。混乱する忍は、現れた警察官・加納に連行されてしまう。だが、連れられた場所には「自分」と同じ容姿・同じ行動をとる奇怪な存在に苦悩する人々が集っていた。彼らはその存在を「バイロケーション」と呼んでいた…。ドッペルゲンガーとは異なる新たな二重存在を提示した、新感覚ホラーワールド!

第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作です。
ホラー味は薄目です。「バイロケーション」の存在を前提とした、サスペンス、というほうがぴったりでしょうか。
「バイロケーションとドッペルゲンガーとの差異は、後者がほとんど喋らず、ただそこに存在しているだけなのに対して、バイロケーションはあたかも『人間』のように振舞い会話し、そして食事まですることだ。友人知人に対してまるで『本人』のように接し、世間話をしたり約束をしたりする。」
「自分とそっくりの人間だ。彼ら彼女らは、当然『自分』なので、オリジナルの記憶も知識も全て持っている。だから性質が悪い事に、バイロケーションは自分がバイロケーションだと気付かない。何故なら、自我や記憶をすべて所持しているからだ」(47ページ)
と説明されている現象(?) です。
これだけでも、かなり厄介な存在だとわかりますね。
どう厄介か、いくつかディテールが重ねられていって、読者に伝えられます。
バイロケーション、という存在の創出だけでも、おもしろいなー、と思いましたが、そのうち、バイロケーションと本人の、「ホンモノ」争い、という展開となります。なるほどねー。
もし、自分にバイロケーションが発生(?) したら、どう感じ、どう行動するでしょうね?
ミステリの手法も駆使して、かなり気を使って物語は展開していくのですが、ミステリを好きな人なら、ラストの展開は予想がついちゃうかもしれません。
ただそれでも、サスペンス色が強かったところに、すっとホラー色が立ち上がってくる、というか、哀しみと怖さが一体となったラストは、印象深かったです。

<蛇足>
ところで、「もう一人の自分であるバイロケーションをなんとかする会」の会長って、どういう人なんでしょうね?
すごーく、便利な人物なので、ちょっと安直な設定に思えました...
もっともそれでも、デビュー作がこのレベルで楽しい作品なので、今後に期待しています!
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