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パンドラの火花 [日本の作家 か行]


パンドラの火花 (新潮文庫)

パンドラの火花 (新潮文庫)

  • 作者: 黒武 洋
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/01/29
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
死刑制度廃止。そのとき、政府が扱いあぐねたのは、すでに判決が確定していた死刑囚たちだったが……。十六歳で家族六人をみな殺しにした横尾友也も、今や五十代の死刑囚。彼に更生の余地ありとする政府は、刑の執行停止を交換条件に、「ある人物」を説得して、その凶行を未然に防ぐことを命じた。果たして、罪とは償えるものなのか?  罪と罰の根源を問うクライム・サスペンス。


「そして粛清の扉を」 (新潮文庫)で第1回(2000年) ホラーサスペンス大賞を受賞してデビューした黒武洋の第2作です。
「そして粛清の扉を」 が結構強烈な印象を残しておりまして、ずっと気になっていた作家でした。
なにしろ、「そして粛清の扉を」 は、卒業式を翌日に控えた高校で、女性教諭が立てこもって、生徒を次々に殺戮していく、というストーリーでしたから。確かに、設定は物議を醸しそうなものではありますが、ミステリとしておもしろいアイデアがいくつも盛り込まれていましたし、スピーディーな展開は手が込んでいたように思いました。

今回「パンドラの火花」 もアイデアが光るなぁ、と感じました。
上で引用したあらすじではぼかして書いてありますが、相当早い段階でわかることなのでここで明かしてしまいますが、死刑囚がタイムマシンで過去に遡り、犯行前の自分を説得する。タイムリミットは72時間、というものです。
興味深い設定だなぁ、とくいくい読み進んでいくと、第2章までいったら、いったん区切りがついてしまいます。
あれれ? と思って第3章に進むと、別のエピソードが。
連作なのかな? と思ってさらに進むと、全体としてのストーリーが浮かび上がってくる。(といっても、短編が最後に一つにつながる、というタイプではありませんので、為念。)
最終章で一気呵成に描き出される、作品の遠景というか、俯瞰図というか、これがクライマックスなんですね。冒頭に提示されて、その後具体的に展開されていくタイムマシンを使ったアイデアが、こういう絵姿になるんだなぁ、と感心。
こういうお話、大好きです。黒武洋、やはり手が込んでいますね。
不満もありますが(たとえば、第3章で描かれるような事態は、容易に想像がつくような事態なので、そもそも防ぐための措置が取られていてしかるべきかと思います)、アイデアとその展開には魅了させられました。
作者のほかの作品も、読んでいきたいです。

ところで、この文庫本の解説はこの作品をマンガ化した漫画家・近藤崇さんが書いていまして、媒体の違いを意識させてくれるとてもよい解説だと強く感心したのですが、あっさりとネタを割っている箇所が何ヶ所もありましたので、手に取られる際は解説を読むのは本編を読み終わってからにされた方がよいと思います。



タグ:黒武洋
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