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QED 出雲神伝説 [日本の作家 高田崇史]


QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
奈良・初瀬(はせ)川沿いのマンションで起こった、密室殺人事件。その一週間前に橿原(かしはら)神宮で起こった、ひき逃げ事件。どちらの現場にも、「出雲神流(いずもしんりゅう)」という古の忍び集団の紋様が残されていた。事件の真相は?  そして、奈良に「出雲」という地名が数多く残されている理由は?  古代出雲の起源が、今、解き明かされる!


シリーズもいよいよ大詰めを迎えてきました。
次の「QED 伊勢の曙光」 (講談社文庫)が最終巻となります。

今回のテーマは、タイトルにもあるとおり、出雲、なんですが、島根の出雲、だけではありません。
文庫の帯に
「奈良の出雲と島根の出雲、どちらが本当の『出雲』なのか?」
と書かれているように、奈良の出雲が取り上げられています--というか、こちらがメイン!?
ほかにも、京都山城の国に出雲郷があった、と紹介されていますし、タタルたちは丹波亀岡の出雲大神宮を訪れます。
この亀岡市千歳町にある出雲大神宮は何度か行ったことがあるので、なんだかうれしくなってしまいました。知っているところが出てくると、うれしいですね。しかも、それがかなりマイナーな場所だったりするとひとしお。でも、「元出雲」と呼ばれていたなんて、知らなかったなぁ。吉田兼好の徒然草に出てくるのは知っていたんだけど。

このあと、タタルによる、出雲のおさらいが始まるのですが、いやあ、いつにもまして資料が多い印象ですね。盛りだくさん。
因幡の素兎の話もあっさり解説されます。あら、そうだったの? とまず感心。
高さ十六丈(48.48メートル! ビル12,3階分と書かれています)の出雲大社が何度も倒壊した理由も。これまたあっさりしているけれど、なんとなく納得。
こういうのがあちこちにあって、薀蓄系の面目躍如といったところでしょうか。

254ページになって、ようやく(?)、テーマがまとめられます。
「出雲が島根ではなく、奈良にもあった。そこまでは良いとしても、ではどちらが元なのか?
 そして、奈良や京都に、どうして出雲がたくさん散らばっているのか。」
うーん、わくわくしました。

現実の事件なんて、どうでもいい感じ(失礼)。
もともとQEDシリーズは、歴史と現実の事件の結びつきに剛腕を発揮し、そこが魅力ではあるのですが、この「QED 出雲神伝説」の場合、現実の事件の動機が、読者をねじふせるには力不足だと感じました。
事件の現場に残されている謎の紋様の仕掛け(?) は遊び心満載で楽しかったですが。

でも、全体としては、出雲をめぐる謎がおもしろかったので、十分楽しめました。
邪馬台国は九州だったか、畿内だったかのタタルの考えがあっさりと書かれていたりして、油断なりませんね。タタル説、かなり納得感あるような気がしました。

巻末に「QED~flumen~出雲大遷宮」というおまけ(?) が収録されています。
こちらでは、太古は出雲大社の本殿の高さは98メートル! と紹介されています。うわーっ。ちなみに、現在の本殿は24メートルだそうです。
こちらは、出雲大社本殿の天井に描かれている「八雲之図」には、どうして七つしか雲が描かれていないのか? という謎と、拝殿からだと大国主命の横顔を拝む形になるのはなぜなのか? という謎が解明されます。


<蛇足>
「着信履歴を鑑みて」(58ページ)という文章があります。「を鑑みて」という表現、やはり気になります。間違い、じゃないのかなぁ?





タグ:QED 高田崇史
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