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船から消えた男 [海外の作家 F・W・クロフツ]


船から消えた男 (創元推理文庫)

船から消えた男 (創元推理文庫)

  • 作者: フリーマン・W・クロフツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1982/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
やむを得ず長い婚約期間を過ごしているジャックとパムの許に、桁外れの儲け話が舞い込んだ。懸案の経済問題が解決し憧れの結婚生活は目前--と思われたそのとき運命は暗転する。失意のどん底でパムは一縷の望みを見出し、海を渡ってロンドンへ。フレンチ主席警部に会おう。管轄外の事件ながら、捜査に関わり、公正で親切そうだったあの人なら助けてくれるんじゃないかしら……。


2015年の復刊フェアの1冊です。
引用しておいてなんですが、↑ あらすじとは思えませんね...
ここに書かれているパムの行動は、物語もかなり後半になってからのものですから。


創元推理文庫恒例で扉のあらすじも引用します。
北アイルランドの小さな町で平穏な毎日を送っていたパミラと婚約者ジャックはある化学上の発見の実用化計画に参加することになった。発見とは、ガソリンの引火性をなくし危険性のない燃料にできるというものだった。実用化されれば彼らが巨万の富を得るのは間違いない。計画が進み、ロンドンのある化学会社との契約成立も間近というとき、その化学会社の社員が失踪した。ロンドンへ向かう船から姿を消したのだ。数日後、彼は水死体となって発見された。ベルファスト警察からの要請で捜査に乗り出すフレンチ警部。事態は意外な展開を見せ……。

こちらの方がストーリーがわかりますね。
ここに書かれているようなガソリンを安定化させる技術、実現したら確かにさぞかしお金になることでしょう。
パムが喜ぶのもわかる。

この作品の特徴は、このようにパムの視点のパートが結構多いということでしょう。
逆にいうと、フレンチ警部の視点のパートの方が少ない。ほかにも2名視点となる人物がいまして、合計4名の視点でつづられます。
この視点の切り替えがなかなか物語としては効果的だったと思います。
パムの視点が多いので、本格ミステリのごりごりした感じがやわらいでいるのもポイントですね。
法廷シーンもあるのですが、パムの視点で描かれるので、結構はらはらします。

犯人をつきとめる手がかりであったり、船を舞台にしたトリックだったりは、お世辞にもうまくいっているとはいえない出来栄えですが、結構どぎつい事件をあっさりと読ませてしまう作品に仕立てている点、クロフツもうまいもんだなぁ、と感心しました。
ただ、ストーリー展開の核となった、ガソリンを巡る技術、ちょっと軽く扱いすぎですよ、クロフツさん。ものすごい注目を集めちゃうテーマなんだから、もう少し気を配ってもらえれば...



<蛇足1>
被害者が会社に打っている電報が、真相を知ってから考えるとちょっと???です。
こんな電報、打たないでしょ...


<蛇足2>
原題、Man Overboard! って、船から「人が落ちたぞ~」という言葉なんですが、そういうシーン、本書にありません...


原題:Man Overboard!
作者:Freeman Wills Crofts
刊行:1936年
訳者:中山善之





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