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偽りの銃弾 [海外の作家 か行]


偽りの銃弾 (小学館文庫)

偽りの銃弾 (小学館文庫)

  • 作者: ハーラン コーベン
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2018/05/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
何者かに夫を射殺された元特殊部隊ヘリパイロットのマヤ。二週間後、親友の勧めで二歳の娘の安全のために自宅に設置した隠しカメラに映っていたのは、殺されたはずの夫だった。彼は生きていたのか、それとも誰かの罠か、あるいは戦場の後遺症によるマヤの幻覚か。夫の死に潜む謎を追ううちに、マヤは四か月前に殺害された姉クレアの秘密、さらに十七年前のある事件へとたどり着く……。
ハードボイルドなヒロインの生き様、予想を遥かに超える結末。本作に惚れ込んだジュリア・ロバーツ製作・主演で映画化が進む、ベストセラー作家の傑作サスペンス!


ハーラン・コーベン、ひさしぶりです。
確か、ハーラン・コーベンには未読本があったはず。それも船便で持ってきたはず、と確認してみたのですが、見当たりません。どうも間違えて日本において来てしまったようです。
あ~あ。「ステイ・クロース」 (ヴィレッジブックス)を持ってきたはずだったのに...
ハーラン・コーベンは、お気に入りの作家のひとりでして、特にデビュー作「沈黙のメッセージ」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)以来のマイロン・ボライターを主人公にしたシリーズが大好きです。
これまでの全翻訳作は持っていますし、上記の「ステイ・クロース」 を除いて、全翻訳作を読んでいます。
実はハヤカワミステリ文庫で出ているマイロン・シリーズとそれ以外とではかなり手触りが違う作品になっていまして、マイロン・シリーズを懐かしく思ったりしているのですが、手触りが違ってもハーラン・コーベンの作品は面白いので、続けて読んでいます。解説で堂場瞬一も書いていますが、「マイロン・シリーズの未訳部分も、また読みたいものである。」です。

さておき、今回は女性の退役軍人が主人公です。
手堅いサスペンスかな、と思いきや、なかなかの(ミステリ的な)野心作ではないですか。
もっとも作者は「予想を遥かに超える結末」を仕掛けてやろうとしただけで、ミステリ的な意味合いとかはあんまり考えてはいないでしょうが、日本で同じ趣向を狙った泡坂妻夫の作品が復刊(amazon にリンクを貼っていますのでネタバレ覚悟でご確認ください)されていたのでタイミングとして印象的です。
サスペンスタイプの作品には珍しく
“絶対にありえないことを除外して残ったものこそ、どんなにありそうになりことでも、真実にちがいない”
というシャーロック・ホームズのことばやオッカムの剃刀という語を何度も使ってみせていますので(たとえば462ページに両方でてきます)、ひょっとしたらちゃんと意識していたのかもしれませんが。ただ、泡坂妻夫のような超絶技巧といった感じではなく、ちょっとそのあたりは雑な気がします...

解説の堂場瞬一がまとめているストーリー紹介がすばらしいので、読もうかどうかストーリーを確認してからとお考えの場合は解説を2ページ立ち読みして判断されるとよいかとおもいます。
途中まで読んだところで、あらすじでいう「マヤは四か月前に殺害された姉クレアの秘密、さらに十七年前のある事件」までたどり着いたところで、だいたい話の成り行きが読めたような気になります。
ウィキリークスを彷彿とさせる<コーリー・ザ・ホイッスル>というサイトとその創設者が登場することで、そして主人公マヤがイラクでの特殊部隊経験を持ち<コーリー・ザ・ホイッスル>に過去を暴かれていることで複雑化・輻輳化していますが、主人公の夫が大富豪の御曹司という設定で、自らを守ろうとする名家とそれを取り巻く事件という構図が浮かび上がってきますから。
これをどうひねるのか、あるいはひねらないのか、が作者の腕の見せどころですが、さすがはハーラン・コーベンというべきか、ちょっと想定外のボールを投げ込んできたなぁ、というところ。

ひさしぶりのハーラン・コーベン、堪能しました。
あー、「ステイ・クロース」 を日本において来てしまったことが、よくよく悔やまれます。

ジュリア・ロバーツが惚れ込んで、制作・主演で映画化とのことですが、まったく余計なお世話ながらジュリア・ロバーツはミスキャストだと思うんですけど...



<蛇足>
引用したあらすじにある「生き様」。
やめてもらえないでしょうか、こういう無神経な単語を使うの。もうずいぶん広まってしまっているので、無駄な抵抗だとはわかっているのですが。
あるいは、この作品の主人公の場合「生き様」がぴったりだという意味合いが込められているのでしょうか?


原題:Fool Me Once
作者:Harlan Coben
刊行:20016年
訳者:田口俊樹・大谷瑠璃子



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