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悪女パズル [海外の作家 パトリック・クェンティン]


悪女パズル (扶桑社ミステリー)

悪女パズル (扶桑社ミステリー)

  • 作者: パトリック クェンティン
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大富豪ロレーヌの邸宅に招待された、離婚の危機を抱える三組の夫婦。仲直りをうながすロレーヌの意図とは裏腹に、屋敷には険悪な雰囲気がたちこめる。翌日、三人の妻の一人が、謎の突然死を遂げたのを皮切りに、一人、また一人と女たちは命を落としていく……。素人探偵ダルース夫妻は、影なき殺人者の正体を暴くことができるのか? 『女郎ぐも』『二人の妻をもつ男』の著書の初期を代表する「パズル」シリーズ第四作、ついに本邦初訳。


「迷走パズル」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら
「俳優パズル」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら
「人形パズル」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら
に続くシリーズ第4作です。
前作「人形パズル」 の感想で、『シリーズ次作「悪女パズル」 (扶桑社ミステリー)は昔読んでいるのですが、忘れちゃっているので読み返した方がいいかな??』と書いたのですが、その通り、再度購入し読み返しました!

「人形パズル」 に続いて、ダルースは海軍の休暇中です。
大富豪ロレーヌの屋敷に招待されて、今度こそゆっくり休暇をアイリスと楽しむはずが...
屋敷にはロレーヌの3人の友人、ドロシー、ジャネット、フルールが既にいたのですが、ロレーヌの迷惑な思いつきで、3人の夫たちも招待されて後からやってきます。この3組の夫婦が離婚寸前、仲が非常に悪くなっている、というのがポイント。
この「悪女パズル」、すっかり内容は忘れてしまっていて、まるで初読のように楽しめたのですが、この3人の夫たちが3人の妻たちとまみえるシーン(27ページ)は読んだら強烈に蘇ってきました。ああ、この話、確かに読んだな、と。

第一部 ドロシー
第二部 ジャネット
第三部 フルール
第四部 ミミ
第五部 ロレーヌ
第六部 アイリス
となっていまして、順に殺されていきます。
おいおい、アイリスまでかよ、と思わせてくれるのがまた楽しい
(この本、目次がないのが残念です。あったほうが絶対おもしろかったのに)

最初の毒殺も、その次の溺死も殺し方としてはちょっと現実的ではないなと思ってしまいますが、複数の夫婦関係を錯綜させて人間関係の緊張を生み出し、ミステリならではの雰囲気が出来上がっているのはさすがですね。
だからこそ動機を軸にしてアイリスとピーターの推理がくるっとまとまっていく流れが光るのだと思います。
突出したトリックとかがあるわけではないですが、かっちり仕上がっていて、再読してよかったですね。

それにしてもこの本、翻訳がひどいです。いくつか挙げておきます。
「ロレーヌは運転そっちのけでゴール人のようなジェスチャーをした。」(50ページ)
ゴール人? 普通日本語ではガリア人といいますね。ちょっとひねってケルト人と訳すこともあるかもしれませんが。
「リノには見るべき何かがある」(50ページ)
中学生の英文和訳を見ているみたいな訳です。
「世界最大の小都市だ」(51ページ)
も言いたいことはわからなくもない気がしますが、苦笑するしかありません。
「アイリスは不正に手に入れた金銭をかき集め」(57ページ)
アイリスがスロット・マシーンでジャック・ポットをとるシーンなんですが、カジノのスロット・マシーンで手に入れたお金は、不正、ではないでしょう。
せいぜい、日本語でいうと、あぶく銭(悪銭)、程度ではないでしょうか。
「襟元が大きくくれた、中世王朝風の袖のついた栗色のロングドレス」(215ページ)
大きくくれた? 辞書を引いても意味がわかりませんでした。くくれる、でしょうか? でも、大きくくくれたでも意味がわかりません。
「しかし私の知るかぎりで、そんな人間はまったくいやしないーー略ーーそんなやつはね」(290ページ)
「そんな」とまず言ってから、その内容を後から説明するなんて使いかた、日本語ではありません。
本当に中学生の和訳みたい...
「厚ぼったい、法定紙幣の束だった」(360ページ)
原語逐語訳なんでしょうねぇ。法定紙幣なんて普通の文章で使いませんね。


<蛇足>
「そのことでミセス・ラッフルズの振りをする必要はないよ」(320ページ)
とアイリスにピーターが言うシーンがあり、ミセス・ラッフルズに「英国の小説家E・W・ホーナングの探偵小説の主人公」と注がついているのですが、なぜミセス・ラッフルズなのでしょうね?
「二人で泥棒を―ラッフルズとバニー」 (論創海外ミステリ)を皮切りに翻訳もありますが、義賊ラッフルズ=男なんですよね。
そもそも、ラッフルズ夫人って、いたかな?


原題:Puzzle for Wantons
作者:Patrick Quentin
刊行:1945年
訳者:森泉玲子



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