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新聞王がボストンにやってきた [海外の作家 レスリー・メイヤー]

新聞王がボストンにやってきた (創元推理文庫)

新聞王がボストンにやってきた (創元推理文庫)

  • 作者: レスリー・メイヤー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
『ペニーセイヴァー』が〈今年の最優秀コミュニティ新聞〉に選ばれ、ボスとともにボストンで開かれる新聞協会の年次総会に出席することになったルーシー。久々の都会と同業者との交流を満喫していたが、新聞業界の大立て者ルーサー・リードが晩餐会中に急死。警察が関係者を調べ始めた。すかさず新聞記者ルーシーの好奇心&探偵根性がうずきだすが……。主婦探偵ボストン出張編。


ルーシー・ストーンを探偵役とするコージー・ミステリシリーズの第10弾です。
前作「九十歳の誕生パーティ」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら)を読んでから2年以上の日があいてしまいましたが、快調に読み進むことができました。
すっと世界に入り込むことができましたし、なによりルーシーたちおなじみの登場人物たちにまた会えて、まさにコージー、くつろいだ気分になれました。

しかし、普通の主婦探偵のような形で「メールオーダーはできません」 (創元推理文庫)に登場したルーシー、今やすっかり新聞記者になっていますね。
でも、同時に主婦でもある。二足のわらじですね。

この「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)では新聞協会の年次総会ということで、いつものティンカーズコーヴから離れ、大都会ボストンへ!
家を離れるので、留守宅と家族のことが気になってしかたがない、
ミステリ的には意味がありませんが、このルーシーの家族の物語が挟まれるところがシリーズ読者にはうれしい枠組みですね。(事件とは関係のない家族のエピソードの中から、ルーシーが謎解きのヒントを掴む、なんていう仕掛けがあればいいのですが...これは、ないものねだりです)

新聞協会の年次総会ということで、ルーシーが出席するパネルディスカッションも楽しいですし、新聞業界の舞台裏(?) が少し覗けるうえ、新聞記者の動きも興味深く読むことができます。
事件は、この総会が開かれているホテルで起こります。
ルーシーが、するすると物語の主要人物と知り合いになるところはご愛敬ですが、おかげで読者にも身近に感じさせることができていると思います。
新聞界の大立て者が殺される、経営はそんなにうまくいっているはずはないのに(新聞はどこも大変だそうです)羽振りがよさそうとか、常套的でも手堅い設定でミステリの世界を展開していきます。
ミステリ的には取り立てて尖ったところはありませんが、素人探偵であるルーシーが真相に気づいてもおかしくないように仕上がっていて自然です。

シリーズの今後にも期待、と言いたいところなのですが、
「このシリーズの日本での出版は、十作を迎えた今回で一区切りということになりました。」
と訳者あとがきで衝撃の発表がなされています。
本国では順調に年1冊程度出版されて続けていて、24冊を数えているようです。
おそらく、日本での売れ行きが良くなかったのでしょうねぇ。逆に10冊目まで訳してくれてありがとう、というべきなのかもしれません。
短い中にバランスの取れたシリーズだったので、残念ですね。
2014年8月出版のこの「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)が邦訳の最後だったので、そうですね、来年9月5年ぶりにシリーズの翻訳再開ってどうでしょうか、東京創元社さん? 絶対買いますよ!


<蛇足1>
「イヴァナ・トランプみたいな女性よ」(76ページ)
イヴァナ・トランプといえば、トランプ大統領の前々妻ですが、本書原書が出た2003年にはすでに離婚していていましたね。
でも、レスリー・メイヤーも、トランプ氏が後に大統領になるとは予想していなかったでしょうねぇ。

<蛇足2>
「中国風の角ばった大きなスプーンとはしはあまり使ったことがなく」(111ページ)
という記載があります。
中華風というので、レンゲのことかな? と思ったのですが、レンゲだと「角ばった」にはなりませんね... 中華で角ばったスプーンって使いましたっけ? なんだろな?


<蛇足3>
「オールドミス二人の懸垂分詞だかなんだかのごたくを聞くのはごめんだ」(194ページ)
懸垂分詞?
ネットで調べてしまいました。学校の英文法の授業では教えてもらわなかったはず...
なるほど。文法的には基本的に間違いなんですね。



原題:Farther's Day Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2003年
訳者:髙田恵子






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