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盲目の理髪師 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)

盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/05/31
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
大西洋上の豪華客船で重大な盗難事件と奇怪な殺人事件が発生する。なくなったはずのエメラルドがいつの間にか持ち主のもとにもどったり、被害者が消えたあとに“盲目の理髪師”が柄にあしらわれた、血まみれの剃刀が残っていたり。すれ違いと酔っ払いの大騒ぎに織り込まれる、不気味なサスペンスと度肝を抜くトリック。フェル博士が安楽椅子探偵を務める本格長編、新訳で登場。


カーの新訳です。
この作品とは相性が悪いのか、旧訳版で2度ほど読んでいるはずですが2度とも楽しめなかった記憶があります。
新訳で再TRYといったところです。
で、結果はどうだったかというと、やはり相性が合わないな、というところ。
帯に
「大西洋の豪華客船で起きる奇怪な事件と酩酊者たちの大騒動」
とあるのですが、この酩酊者たちの大騒動をまったく楽しめなかったのが敗因です。
解説で七河迦南も書いていますが、この「盲目の理髪師」は『乱歩が挙げる三大特徴の一つ「ユーモア」の部分が全面に押し出され、カー全作品の中でも最大の笑劇(ファルス)作品であることは衆目の一致するところかと思います。』ということなのですが、この「ユーモア」「ファルス」ぶりが、ちょっと合わなかったんですね。

ただし、いくら肌に合わないといっても、ミステリとしてはよく企まれた作品であることはきちんと認めておかねばと思います。
名探偵・フェル博士が、今回は安楽椅子探偵の役をつとめるのですが、フェル博士が語り手である探偵作家モーガンの話を聞いて、前半、後半にそれぞれ8つずつ合計16の手がかりがあると指摘するのもわくわくしますし、謎解きシーン(353ページ~)では根拠となるページを示しながら順に手がかりをたどって真相を指摘するシーンはとても素晴らしい。(このあたりになると、ファルスの要素がなくなっているので、素直に読めました)
この手がかりをめぐる点については、七河迦南の解説が素晴らしいですね。
『「なぜ現場に被害者の帽子がなかったのか」に始まり、厳密な論理のもとあらゆる可能性を消去していって「故に犯人は~である。QED」宣言に終わるクイーンのフェアプレイを直列的とすれば、カーのそれはいわば並列的なのです。何気ない描写に示された情報やちょっとした矛盾、それらは手がかりというより伏線という方が適当な場合が多く、一つ一つは必ずしも犯人に直結するとは限らない。しかしひとたび視点を切り換えてみると、至る所の描写が皆その意味を変え、作品の全体・各登場人物の人間像全てが有機的に結びついて初めから一つの方向を向いていたことがわかる。それこそがカーのフェアプレイなのです。』
なんかこの指摘を読んですっきりしました。

タイトルの「盲目の理髪師」は、現場で見つかった剃刀の柄のデザインとして描かれていた絵に基づきます。(138~139ページ)



原題:The Blind Barber
著者:John Dickson Carr
刊行:1934年
訳者:三角和代








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zombiekong

こんにちは。ディクスン・カーの作品は中学生の頃に当時出ていた全部(カーター・ディクスンも)読みました。私はファルスの部分にハマった人です。新訳でまた(45年ぶりに)読んでみたくなりました。
by zombiekong (2018-11-14 11:54) 

31

zombiekong さん
ご訪問、nice!、そしてコメントありがとうございます。
カーのファルスは楽しめるものもあるんですが、「盲目の理髪師」は苦手な感じです...
by 31 (2018-11-15 07:38) 

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