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SOSの猿 [日本の作家 伊坂幸太郎]

SOSの猿 (中公文庫)

SOSの猿 (中公文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か? そもそも答えは存在するの? 面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。


この「SOSの猿」 (中公文庫)は、五十嵐大介のコミック「SARU」 (上・下) (IKKI COMIX)と対になるもの、ということですが、「SARU」は読んでいません。
「SOSの猿」「SARU」は、「猿」「孫悟空」「エクソシスト」という共通するキーワードを持っているということで、なにやら三題噺みたい。(でも、猿と孫悟空は似たようなものなので-というと孫悟空に叱られますね-、三題噺と呼ぶのにすこし躊躇しますが)
しかしまあ、変な話を考えるなぁ、といつもながら伊坂幸太郎の本には感心します。

なにしろ、孫悟空ですからねえ(ほかにも変なところはありますが)。
お話は、引きこもりの青年を悪魔祓いでなんとかしようとさせられる「私の話」というパートと、証券会社で発生した誤発注事件の原因を探るシステム会社員の「猿の話」というパートの2つが交互に語られます。
こういうタイプのストーリーでは、この2つがどうつながるのかを考えながら読者は読んでいくことになるわけですが、この2つの話のつながりはミステリではよくあるパターンの1つになっていまして、その点ではサプライズは大してないのですが、つなぎ合わせるのが孫悟空、ということですからねぇ...
ただ、伊坂幸太郎の文章や登場人物の佇まいなどからすると、孫悟空くらい出てきてもおかしくないかな、と思えてしまうから不思議です。

それにしても孫悟空なんてテレビ番組で見ただけで、「西遊記」は読んでおらず(ひょっとしたら子供向けのダイジェスト版で読んだことがあったかもしれませんが記憶にはありません)、勝手なイメージだけがありますが、
「俺は東勝神洲傲来国は、花果山の生まれ、水簾洞主人にして、美猴王、斉天大聖、孫悟空だ」(155ページ)
と登場するところから、ほほう、と感心してしまいます。

そのほかにも、何かが起こったようで起こらなかったり、起こらなかったようで起こっていたり、伊坂幸太郎らしい癖のある物語を楽しむ作品だな、と思いました。
(その意味では、伊坂幸太郎初心者には厳しいかもしれません)


<蛇足1>
「この男の中には『繊細な男』と『図太い男』の二人がいて、失敗を反省するのはいつだって繊細な男の方だけ、図太い奴は図太いまま、そういう具合なのだ。
 何千回、反省をしたところで、再発防止にはまったく繋がらない、ミスが治らない人間の典型とも言える。まさに、うっかりミスをするために生まれてきたかのような男ではないか。」(184ページ)
という箇所を読んで、なるほどなー、と思いました。

<蛇足2>
印象に残ったフレーズです。
「少年たちが、大人を試すように口にする、『どうして人を殺してはいけないのか』という質問同様、問いの内容よりも、その問いの裏に潜む意地悪さにげんなりしてしまうのだ。」(290ページ)


タグ:伊坂幸太郎
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