モモンガの件はおまかせを [日本の作家 似鳥鶏]
<裏表紙あらすじ>
フクロモモンガが逃げたと思しき古いアパートの部屋には、ミイラ化した死体が。いったい誰が何の目的で死体のある部屋でモモンガの世話を? 謎の大型生物が山の集落に出現。「怪物」を閉じ込めたという廃屋はもぬけのからだった。おなじみ楓ケ丘動物園の飼育員たちがオールキャストで活躍する人気ミステリーシリーズ第4弾!
似鳥鶏の動物園シリーズ第4弾です。
「いつもと違うお散歩コース」
「密室のニャー」
「証人ただいま滑空中」
「愛玩怪物」
と4話収録ですが、ゆるやかにつながっているところがポイントですね。
なかでは「証人ただいま滑空中」がミステリ的に印象に残りました。
ミイラ化した死体、という事件が強烈ですが、ミステリ的には、部屋にいたモモンガが被害者が殺された後もきちんと世話をされていた状況、というのが面白く、犯人はなんだってモモンガの世話を続けたのか、という謎がすっと立ち上がってきて見事です。
動物園シリーズならではの謎、ともいえるかもしれませんね。素晴らしい。
この「モモンガの件はおまかせを」 (文春文庫)通して、ペット放棄問題というのでしょうか、日本のペットをめぐる問題が取り上げられていて、社会派っぽいテーマが設定されています。
語り口や全体のトーンと違って、ざらっとした読後感が残るところがポイントでしょうか。
それにしても最後の「愛玩怪物」で出てくる服部君の自宅がやはり興味深い。鴇先生の過去も少しわかりましたし、こうやって徐々に徐々に、登場人物の全体像が描かれていくのかもしれませんね。
<蛇足1>
「掌に乗りそうなチワワの子犬が ~ 略 ~一所懸命に前足で耳を掻いている」(41ページ)
ちゃんと一所懸命だ! 似鳥鶏、素晴らしい。
<蛇足2>
「ばれて周囲にからかわれ、気まずくなるまでが職場恋愛ですよ」(56ページ)
と服部君がいう場面があるのですが、なかなか含蓄深いですねぇ...(笑)
<蛇足3>
「被害者は現在は知りませんが、昨年急性腰痛症をやったそうです。」(143ページ)
とありまして、これ、ぎっくり腰ですよね...こういうちゃんとしたっぽい名前あるんですね、ぎっくり腰に。(当たり前ですけど)
<蛇足4>
「週刊文椿(ぶんちゅん)」(244ページ)というのが出てきます。
この「モモンガの件はおまかせを」 が文芸春秋社から出ているからこの名前にしているんだと思いますが、文椿って、ちょっとかわいい感じがしますね。
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