ポリス猫DCの事件簿 [日本の作家 若竹七海]
<裏表紙あらすじ>
三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのん気に暮らす通称「猫島」。島の臨時派出所の巡査・七瀬晃の相棒は、丸顔で目つきの悪いでっかいドラ猫、DCだ。個性的すぎる島民や困った観光客が引き起こす騒動にてんてこまいの毎日。そんな中には、大きな事件も隠されていて…。お気楽だけど真面目な青年警官とポリス猫が、意外な(?)活躍を見せる傑作コージー・ミステリ。
ずいぶん久しぶりの若竹七海です。
このブログで感想を書くのは、「さよならの手口」 (文春文庫)(リンクはこちら)以来で、実に2年10ヶ月ぶり。
例によって感想を書けていない本として日本推理作家協会賞受賞作を表題作にした短編集「暗い越流」 (光文社文庫)があるのですが、これすら手元の記録では読んだのは2016年12月なので、2年3ヶ月前ですね。
佳多山大地による解説によると葉崎市シリーズの7作目とのことです。
①「ヴィラ・マグノリアの殺人」 (光文社文庫)
②「古書店アゼリアの死体」 (光文社文庫)
③「クール・キャンデー」 (祥伝社文庫)
④「猫島ハウスの騒動」 (光文社文庫)(リンクはこちら)
⑤「プラスマイナスゼロ」 (ポプラ文庫ピュアフル)(リンクはこちら)
⑥「みんなのふこう~葉崎は今夜も眠れない」 (ポプラ文庫ピュアフル)(リンクはこちら)
⑦「ポリス猫DCの事件簿」 (光文社文庫)
事件簿、というだけあって短編集でして
「ポリス猫DCと多忙な相棒」
「ポリス猫DCと草もちの謎」
「ポリス猫DCと爆弾騒動」
「ポリス猫DCと女王陛下の秘密」
「ポリス猫DCと南洋の仮面」
「ポリス猫DCと消えた魔猫」
「ポリス猫DCと幻の雪男」
の7編に、全体のプロローグ、エピローグとして
「ポリス猫の食前酒」
「ポリス猫のデザート」
が付け加わっています。
各話、猫島(のお馴染みの面々)と直接関係なさそうなエピソードから始まり、そのあと、いつもの猫島のドタバタ(?) となります。冒頭のエピソードがどう猫島と絡んでくるのか、興味を惹かれます。
また、若竹七海らしいと申しますか、猫島の外での事件が全編の根底にあって、1冊を最後まで読むことでその事件の真相が浮かび上がってくる、という趣向が忍ばせてあります(これ、一種のネタバレかもしれませんが、最初から放り投げてあるような事件、記述があるので、ある程度ミステリを読んだことのあるならすぐなにかあると気づくと思いますので書いてしまっても構わないと思います)。
他愛ない事件がほとんどですが、そんな中にも若竹七海らしい意地悪な視線があって楽しい作品集でした。
<蛇足1>
「招き猫だって、もともとは客寄せだったのが金寄せになって、厄除けになったり方位除けになったりしたじゃん。それと同じでしょ」(83ページ)
というセリフが出てきまして、招き猫が金寄せになっている、ということまでは知っていましたが、厄除け、方位除けにまで活躍しているとは知りませんでした...
<蛇足2>
猫島観光協会とやらが作ったポスターのキャッチコピー(?) が注目です(141ページ)。
「よそにくらべりゃすいてます 猫島海岸」
「よそとくらべりゃ及べます 猫島海岸」
「よそより海がよく見えます 猫島海岸」
これを見て、つい最近話題になった三重県にある志摩スペイン村の宣伝を思い浮かべました。
「①並ばないから乗り放題
②空いてるから映え放題
③ライバルが少ないから目立ち放題
④距離も近いから仲良し放題」
ぜひHPをご覧ください! とってもおもしろいですよ。(←HPと書いてあるところをクリックするとスペイン村のHPが開きます。勝手リンクです)
<蛇足3>
「神事の直後から、低気圧が日本付近に腰を据えててこでも動かなくなり、海上には稲妻が走り、葉崎付近では一時間に四十八ミリという豪雨を観測し、葉崎山で土砂崩れが起きて、葉崎在住の作家・角田港大先生宅が半壊し、高価なスコッチウイスキー数本と、こつこつ集めたハードボイルドのペーパーバック・コレクションが土砂とともに押し流された。」(143ページ)
というのが出てきまして、この嵐、「火天風神」 (光文社文庫)の背景でしょうか??
<蛇足4>
「あいかわらず貧乏かわかしている、という財政事情を除けば」(160ページ)
この「貧乏かわかしている」の意味がわかりません....どなたかお分かりになりませんか?
<蛇足5>
「温泉の二文字は、葉崎のロコの心をしっかりとらえ、日帰り入浴にやってくる地元民がひきもきらない。」(280ページ)
ロコ?
ネットで調べたら、
『「ロコ」とは、ハワイ生まれ、ハワイ育ち、ハワイ英語を第一言語とする人たちを指します。 厳密にはハワイで生まれ育った、白人以外の人々のことなんだそうです。』(勝手リンクです)
とありました。Local が訛っている(か、そう聞こえる)もののようですね。
その転用ということでしょうか。
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