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カササギたちの四季 [日本の作家 道尾秀介]

カササギたちの四季 (光文社文庫)

カササギたちの四季 (光文社文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/02/13
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
リサイクルショップ・カササギは今日も賑やかだ。理屈屋の店長・華沙々木(かささぎ)と、いつも売れない品物ばかり引き取ってくる日暮、店に入り浸る中学生の菜美。そんな三人の前で、四季を彩る4つの事件が起こる。「僕が事件を解決しよう」華沙々木が『マーフィーの法則』を片手に探偵役に乗り出すと、いつも話がこんがらがるのだ……。心がほっと温まる連作ミステリー。


「春 鵲(かささぎ)の橋」
「夏 蜩(ひぐらし)の川」
「秋 南の絆」
「冬 橘の寺」
の4編収録の連作短編集です。

最初の「春 鵲の橋」はあっさり読んでしまったのですが、「夏 蜩の川」を読んで、この連作、なんと面倒なことに挑んでいるのだろう、とびっくりしました。
おもしろおかしく書かれているので、ミステリ的な側面が強調されているわけではないのですが、名探偵役の華沙々木がでたらめな推理を繰り広げ、そのボロが出ないように日暮が先回りしていろいろと仕掛ける。先回りするためには、日暮はその段階で本当の真相を見抜いていなければならない。
こんな面倒な縛りがある連作、よく4作も続けましたね。
だって、日暮が推理するでたらめな華沙々木の推理で、他の登場人物を納得させなければならないのですよ(まあ、究極的には菜美だけを納得させればよいのですが)。

そして、この枠組み自体が、華沙々木、日暮、菜美の関係性を規定するものであることがすごいですね。
そしてそれが、最後の「冬 橘の寺」で、違う顔を見せる。
なんてステキな仕掛けなのでしょうか。
道尾秀介の技巧派ぶりが遺憾なく発揮されている良い作品だと思いました。
作者が繰り返し言う、「ミステリの手法は人間を描くための手段であって、目的ではない」という言葉が綺麗に反映された作品ですね。

道尾秀介の作品は積読率が高いのですが、もっと読むペースを速めてもいいな、と思わせてくれた作品でした。


<蛇足>
「手ずれのした表紙には金文字で “Murphy's Low” とある。」(10ページ)
とあって、あれれ? マーフィーの法則、なら Low ではなく Law ですから。
と思っていたら、「蜩の川」では
「読み込まれて手擦れのした表紙には “Murphy's Law” とある。」(73ページ)
とちゃんと Law になっています。単なる誤植だったのですね。
しかし、この Law だけではなく、手ずれ、手擦れと同じ語の表記が揺れているのも感心はしませんね。
光文社文庫、ちゃんと校正しているのでしょうか?
(為念、手元にあるのは、2014年2月20日 初版第1刷 です)



タグ:道尾秀介
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