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推理は空から舞い降りる 浪速国際空港へようこそ [日本の作家 喜多喜久]

推理は空から舞い降りる 浪速国際空港へようこそ (宝島社文庫)

推理は空から舞い降りる 浪速国際空港へようこそ (宝島社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/05/08
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
新米航空管制官の藤宮つばさは、優秀な管制官だった叔母の真紀子に憧れ、一人前の管制官となるべく日夜奮闘していた。同期の情報官・戸神大地とともに、鳥が原因のエンジントラブルや外国要人専用機の離陸失敗事故など、空港で発生する様々なトラブルを乗り越えていく。つばさは、叔母が口にした「管制官に一番必要なもの」を見出すことができるのか。空港を舞台にしたお仕事ミステリー!


喜多喜久というと、化学、科学系の話が中心でしたので、こういうお仕事ミステリを書くのは少々意外でした。
4つのお話があり、連作長編の形をとっています。
帯に短く各話が紹介されています。
Flight 01 「ウォックス・デイ」ある日、着陸トラブルを起こしかけたつばさは、イヤホンから聞こえてきた謎の声に救われる。果たして、声の主は誰だったのか。
Flight 02 「招かれざる侵入者たち」二年前から減少していたバードストライクが、今年になって増加した理由とは? 一方、空港内では謎の白い生物が目撃され……。
Flight 03 「遭難信号は鳴りやまない」強風と視界不良への対応に追われる管制室に、不定期に鳴り響く発信源不明の遭難信号の正体とは?
Flight 04 「ライト・スタッフ」大統領専用機が滑走路で緊急停止し、離陸に失敗、原因が解明されないまま、つばさだけが事故の責任を問われることに……。

扱われている事件(?) は、「日常の謎」と分類してよさそうなものなのですが、お仕事ミステリとして舞台が空港となると、なぜでしょう、ちっとも「日常の謎」のようには感じませんでした。
個人的感覚として、空港自体が非日常だからでしょうか??
ところで、舞台となる空港、浪速国際空港なのですが、勝手に関空なんだろうと思い込んでいましたが、関空ではなく、神戸空港なんですね。

お仕事ミステリとして、主人公である藤宮つばさの職業、管制官の仕事が描かれ、尊敬する叔母が言っていた「管制官に一番必要なもの」がなにかを探っていく物語になりますが、興味深かったのは、つばさの同期大地の仕事ですね。
航空管制運行情報官。略して情報官。「安全のため」だと考えられる案件はすべて、情報官の業務の一部となる(27ページ)らしいです。
名探偵役に向いてますよね。実際、大地が謎を解くのが多いですね。
という意味では、推理は空から舞い降りる、のではなくて、地上から解かれるんですけどね。

日常の謎だから、というわけではないでしょうが、各話なだらかに謎が解かれていきます。
大地くん、いずれもなかなか目の付け処がいいですよ。
Flight 01「ウォックス・デイ」は、ラテン語で「神の声」(為念、色を変えておきます)という意味らしいです。
Flight 02の侵入者は読者には見当がつきやすくなっていますが(物語の構成上)、白い生物、というのが難物ですね。
Flight 03の遭難信号が鳴るタイミングを潮の満ち引き(完全なネタバレなので色を変えておきます)と結びつけるのはさすがです。
Flight 04は、謎を解くというよりはつきとめる、という感じのストーリーでしたが、同期の支えあい?はいいですよね。
最後に、「管制官に一番必要なもの」に、つばさなりにたどり着くわけですが、これ、今一ピンと来ないというか、おおっ、という感じにならなかったのが残念でしたね。

最後に、帯に「文庫書下ろし!」と謳ってあるのですが、巻末を見ると、いずれも雑誌(なのか、ムックなのかわかりませんが)に掲載されたものを収録したものであることがわかります。
このケースで、書き下ろし、と謳うのは詐欺ではないかと思うのですが......
(作者のせいではなく、出版社が悪いのですが)


<蛇足1>
空港は最新鋭の科学技術に支えられている。いわば、オカルトからは最も縁遠い場所の一つだ。(158ページ)
この表現を間違いだと思う人はいらっしゃらないかもしれませんが、個人的にはどうしても気になりますね。最も~の一つ......

<蛇足2>
「エトランゼ」とは「旅人」の意味を持つフランス語だ。(212ページ)
確かにその通りです。
でも個人的には、エトランゼは、異邦人、という思い込みがありまして......カミュを読んでいるわけではないのですが。




タグ:喜多喜久
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