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箱とキツネと、パイナップル [日本の作家 ま行]


箱とキツネと、パイナップル

箱とキツネと、パイナップル

  • 作者: 美涼, 村木
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 単行本

<帯から>
大学を卒業したばかりの僕の新居は、一見普通のアパート・カスミ荘。でも、住人は揃って個性豊かだし、怪現象も続くし…。この土地はキツネに祟られているという噂まであるらしい。一体ここはどうなってるの!?
ようこそ、カスミ荘へ。楽しい隣人とたっぷりの不思議があなたを待っています。新潮ミステリー大賞優秀賞受賞作品。


単行本です。
新潮ミステリー大賞優秀賞受賞作。
作者の村木美涼さんは、「窓から見える最初のもの」(早川書房)(感想ページはこちら)で第7回アガサ・クリスティー賞を受賞しています。

帯に
「これって果たしてミステリ?
 選考委員、激論!
 ……でも、この雰囲気は捨てがたい。」
とありまして......ミステリ好きとしては不安になりますよね。
既読の「窓から見える最初のもの」もミステリ味はとても薄かったですし。
「窓から見える最初のもの」と比較すると、ミステリ味は濃くなっていますが、ギリギリかもしれませんね。

タイトルが、三題噺かな、と思えるような形になっていますが、章題といえる部分も
第一週 回覧板とバスケットシューズ
第二週 コンビニとハイヒール
第三週 立札と目玉焼き
第四週 桃と玄関チャイム
第五週 分電盤とジョギングと、パイナップル
となっていて、風変わりな組み合わせが続いています。
となると、意外な組み合わせが意外な結びつきを見せて驚かせてくれる、というのがミステリ的には普通なんですが、この作品の並べ方、結びつき方は、意外感がありません......

なにより不思議だなぁ、と思うのは、この作品、ミステリっぽく仕立てることもできるように思えるからです。
意外感も、演出することは可能な気がしてなりません。

変わった住人たちとの交流、怪しげな空き地をめぐるエピソード。
風変わりな日常が、徐々にねじれていく展開。

なのに、作者はミステリらしくする道を選んでいない。あえてミステリらしさを捨てているのかもしれません。

特筆すべきはやはり、温かい雰囲気が醸されていること。
登場人物たちにまた逢いたいな、と思えました。

もう少しミステリに寄った作品を書いてもらえるとうれしいな。
なんといっても、新潮ミステリー大賞、アガサ・クリスティー賞作家なのですから。


<蛇足>
「窓を開けると雑草ばかりというのも考えものだが、窓を開けるとお稲荷様というのは、もっと考えものだろう。」(173ページ)
そうなんでしょうか? あまりお稲荷様に悪いイメージはないのですが......









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