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逃げる幻 [海外の作家 ヘレン・マクロイ]


逃げる幻 (創元推理文庫)

逃げる幻 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
家出を繰り返す少年が、開けた荒野の真ん中から消えた――ハイランド地方を訪れたダンバー大尉が聞かされたのは、そんな不可解な話だった。その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。そして二日後、少年の家庭教師が殺される――スコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。


更新に時間が空いてしまいました。
感想を書き溜めしてアップしていた分のことを考えると1ヶ月近く感想を書いていませんでした。

今年最初に読んだ本の感想になります。

今回の「逃げる幻」 (創元推理文庫)でヘレン・マクロイが舞台に選んだのは、第二次世界大戦後のスコットランド。
この作品、この舞台がとてもいいです。
ちょっぴり荒涼とした(?)、うねりのある丘陵地帯、ムア(荒野)。
行ってみたいんですよね、スコットランドのこういう感じの場所へ。
ロンドンにいる間に、と思っているのですが、COVID-19騒ぎのおかげで外出すらままならない状況なので、ちょっと期待薄ですね。

さておき、ムアから消えてしまう少年という、あらすじに書いてある謎?にはあまり期待しない方がよいですし(一種の密室状況ではありますが、肩透かしですから)、謎解きの場面でウィリング博士が明かすダイイングメッセージ(?) の謎解きは、よほど語学に堪能でないとわからない(しかも英語だけじゃない!!)ものではあったりしますが、それらの点を割り引いても、十二分に面白いミステリだと思います。
ああ、あとあらすじや帯に「密室殺人」とあるのですが、これも期待しない方が......(笑)

作品の根幹となるアイデアは、ぱっと聞くと、うまくいくかな? 無理じゃないかな、と思えるのですが、さすがヘレン・マクロイというか、周到に考えられていまして、特に308ページのウィリング博士の説明はとてもよかったですね。
ウィリング博士の謎解きの場面は、ほかにもなるほどね、と思えるところがあちこちにあって、満足!

あと、ウィリング博士の登場の仕方も、注目ですね。
「小鬼の市」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)ほどではないにせよ、名探偵はここで登場するのか、といったところ。


とても面白かったですね。
どうして今まで訳されていなかったのかな?



<蛇足>
「ここはピクト人の国だとおっしゃいましたね」(191ページ)
ピクト人? と思いましたが、古くからスコットランドのハイランド地方を支配していた強大な部族、らしいですね。

<ネタバレの蛇足>
!!ネタバレなので気をつけてください!!
「十五歳や十六歳の少年なら、もともと年齢のわりに幼く見えれば十四歳でも通るだろう。しかし十六歳や十七歳の子が十五歳のふりをするのは無理がある。」(307ページ)
十六歳が両方に含まれるのは矛盾だ、というのは置いておくとしても、そうかなぁ?
十六歳や十七歳の子が十五歳のふりをするのは、もちろん人にもよるでしょうが、簡単な気がします。
!!!!以上ネタバレでした!!!!



原題:The One That Got Away
作者:Helen McCloy
刊行:1945年
翻訳:駒月雅子






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コースケ

31様、お久しぶりです。

『逃げる幻』、十二分に面白いミステリ、同感です。
このあらすじが、ある意味ミスリードだよなあと思った
記憶があります。

全然関係ありませんが、日本は緊急事態宣言が延長となりました
(1都3県)。電車は変わらず混んでます。
by コースケ (2021-03-07 01:00) 

31

コースケさん
ありがとうございます。

イギリスはロックダウンン継続中ですが、ワクチンの接種が予想以上に順調に進んでいます。夏の旅行シーズンに、普通の状態に戻れるとよいのですが。
by 31 (2021-03-09 00:28) 

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