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死者はよみがえる [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


死者はよみがえる【新訳版】 (創元推理文庫)

死者はよみがえる【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/10/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
南アフリカからロンドンへ無銭旅行ができるか? 友人とそんな賭けをした作家のケントは、大冒険の末にロンドンへたどり着いた。空腹のあまり、ホテルで無銭飲食に及んだケントを、予想もしない展開が待っていて――。残酷にして不可解な殺人に関して、名探偵フェル博士が指摘した12の謎がすべて解かれるとき、途方もない真相が明らかに! 巨匠カーの独壇場たる本格長編ミステリ。


4月に読んだ8作目(冊数で言うと9冊目)の本です。
ジョン・ディクスン・カーの「死者はよみがえる」【新訳版】 (創元推理文庫)
旧訳で読んでいます。当時なかなか旧訳が手に入らなくて2002年になってようやく読んでいますね。
細部は覚えていなかったのですが、この作品は印象に残っていることがありまして、それはアンフェアであるということ。
新訳で今般再読し、改めてアンフェアであることを確認しました(笑)。


冒頭主役であるクリス・ケントがロンドンのホテルで無銭飲食に及ぶシーンからスタートで、軽快な物語を予感させてくれ、その後舞台を田舎の屋敷に移して事件が続いていきます。

アンフェアな部分は記憶に残っていたので、なにか手がかりでも伏線でもあったのかと注意して読んだのですが、なかったですね。
すっかりカー・ファンになってしまっているので個人的には笑って許せてしまうのですが、これはダメでしょうね。ずっこけてしまう感じですし、腹を立てて本をぶん投げる人がいてもおかしくないほどの、堂々としたアンフェアぶり。
ここがメインという作品ではなく、有名な絞殺トリックをはじめ種々取り混ぜて構築ぶりを楽しむ作品ではありますが、その重要なパーツがこれではねぇ......苦笑するしかありません。
ただこの思いつきは、おそらくミステリ作家として抗いがたい魅力的なもので、どうしても作中に盛り込みたかったのでしょうね。


<蛇足1>
「殺害されてから、彼の顔は十数回ほど激しく殴られていました――わたしたちにおなじみの鈍器でですよ、もちろん。ですが、その鈍器は発見されませんでした。」(46ページ)
おなじみの鈍器とは何のことでしょうね?

<蛇足2>
「ピカデリーを通る車の音が窓の下から沸き立つように聞こえてくる。この高さからだと、灰色の弊社のような屋根の斜面から、飾り気がなくどっしりしたセント・ジェームズ宮殿のむこう、裸の木の並ぶセント・ジェームズ公園まで見渡せた。」(113ページ)
舞台となるロイヤル・スカーレット・ホテルからの眺めです。架空のホテルでしょうし、現在とはあたりの建物の様子も違うのでしょうが、セント・ジェームズ公園まで見渡せたというのはすごいですね。どの辺という設定なのか気になります。

<蛇足3>
「フェル博士は葉巻の先を見つめた。『いやいや』彼はそっけなくも温かみのある声で答えた。」(121ページ)
そっけなくも温かみのある声??



原題:To Wake the Dead
著者:John Dickson Carr
刊行:1938年
訳者:三角和代




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