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盤上に死を描く [日本の作家 あ行]


盤上に死を描く (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

盤上に死を描く (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 井上 ねこ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
71歳の老婆が自宅で殺された。片手に握っていたのは将棋の「歩」、ポケットに入っていたのは「銀」の駒。その後、名古屋市の老人が次々に殺害されるが、なぜか全ての現場には将棋の駒が残されていた。被害者の共通点も見いだせず行き詰まるなか、捜査一課の女性刑事・水科と佐田はある可能性に気がついて――。事件が描く驚愕の構図とは? 被害者たちの意外な繋がりとは? 衝撃のデビュー作!『このミステリーがすごい!』大賞第17回優秀賞受賞作。


2022年11月に読んだ7作目(8冊目)の本です。
井上ねこ「盤上に死を描く」 (宝島社文庫)
第17回『このミステリーがすごい! 』大賞の優秀賞受賞作

扱っているのはシリアルキラーで、そこに将棋が絡んできます。
絡むのは、将棋は将棋でも詰将棋。
本文中にも棋譜が出てきて雰囲気を盛り上げますね。

現場に残される将棋の駒、連続殺人の被害者たちをつなぐ糸は? という謎なのですが、104ページからの第二部で主役である刑事・水科が見抜く構図、それより前になんとなく(読者に)わかってしまう気がしますが、それはおそらくタイトルのせい。
『このミステリーがすごい! 』大賞応募時点のタイトルは「殺戮図式」だったそうで、それよりははるかに今のタイトルの方がいいタイトルだと思うのですが、若干ネタバレ気味のタイトルかもしれません。

しかし、このアイデアで実際に連続殺人を起こすとはすごい犯人だなぁと思いますが、同時にこのアイデアを作品に仕立てた作者にもびっくり。
史上最年長での受賞とのことで、それを反映してか、ちょっと乾いた落ち着いた文章がそれをカバーしているということでしょうか。
ちょっと個人的にはやりすぎ感があり、あくまで虚構を描くミステリとしてもちょっと踏み外しているという印象だったのですが、みなさまどう読まれますでしょうか?

主役となる女刑事水科とコンビをつとめる「中年女性相手のホストクラブにでもいるほうがよほど似合っている」(19ページ)佐田の二人の関係性が今一つピンと来なかったのは残念ですが、奇想といっていいアイデアを描き切った蛮勇は素晴らしいと思うので、ぜひ次作をお願いします。


<蛇足1>
「南区は犯人の庭であって、土地勘があり、被害者を選び出すためいんはここじゃないとダメということかもしれませんね」(94ページ)
言葉の意味からして、土地「勘」としやすいのですが、正しくは土地鑑だという指摘がありますね。佐野洋の推理日記で読んだのだったかな?

<蛇足2>
「正解手順は5四銀、5二玉、4三銀打、同衾、4一銀以下……4二成香迄の二十一手詰である。」(217ページ)
将棋はやらないので読み飛ばすところですが、同衾には笑ってしまいました。ありがちなミスプリントですね。




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