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dele [日本の作家 本多孝好]

dele (角川文庫)

dele (角川文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」。それが『dele.LIFE』(ディーリー・ドット・ライフ)の仕事だ。淡々と依頼をこなす圭司に対し、新入りの祐太郎はどこか疑問を感じていた。詐欺の証拠、謎の写真、隠し金――。依頼人の秘密のデータを覗いてしまった2人は、思わぬ真相や事件に直面してゆく。死にゆく者が依頼に込めた想い。遺された者の胸に残る記憶。生と死、記録と記憶をめぐる、心震わすミステリ。


本多孝好の本を読むのは、「ストレイヤーズ・クロニクル」 ACT-1 ACT-2 ACT-3 (集英社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)以来です。実に5年ぶり。
この「dele」 (角川文庫)は山田孝之、菅田将暉出演でドラマ化されたようですね。好評のようで、続編「dele2」 (角川文庫)も今年の6月に出ています。
ドラマ化された、という表現は正確ではないですね。詳細はドラマの方のHPで、金城一紀、本多孝好に山田プロデューサーの3人の対談(鼎談?)を見ていただくとして、アイデアの元を本多孝好が出して同時にドラマ化、小説化したみたいですね。
『本多孝好による小説版「dele」 「dele2」  ドラマとは異なるオリジナルストーリー』とも書かれています。
文庫本 の帯には「ドラマの原案・脚本を手掛けた著者自らによるオリジナル小説!」と。
おもしろい試みだと思います。

「ファースト・ハグ」
「シークレット・ガーデン」
「ストーカー・ブルース」
「ドールズ・ドリーム」
「ロスト・メモリーズ」
の5編収録の連作短編集です。

「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」という仕事、確かにニーズありそうですよね。デジタル遺品、という語も割と目にするようになりましたし。
この作品集で気になったのは、いずれの話もわりとあっさりと、依頼人が見られたくないはずのデータを主人公たちが見てしまうことでしょうか。祐太郎(や圭司の姉)に引きずられて圭司も仕方なく、という流れには一応なっていますが、それにしてもさらっと見てしまいすぎな気がします。
もっともそうでないと、個人の想いに届くことがかなり難しくなるので、ストーリー要請上やむを得ないのだとは承知しても、気になるポイントですね。
ドラマは観ていませんが、この点どう処理していたのでしょうか?

各話それぞれ、本多孝好らしい話が展開しますが、一番の好みは「ドールズ・ドリーム」。
依頼人の家族が巻き起こす騒動(?) も取り入れてうまくストーリーが組み立てられていますし、データを祐太郎・圭司が覗き見たときのシーンも印象に残ります。依頼人の願いが浮かび上がってくるラストは、依頼人がするささやかな勘違い(?) も含めて納得感があります。連作的には、デジタル遺品の枠を拡げる作品、とも捉えることができるかもしれません。

ラストの「ロスト・メモリーズ」は、もっともミステリに近づいた作品だと思われますが、ミステリ定番のストーリーのその後を本多孝好テイストで描くものとして捉えることができ、なかなか興味深いです。


<蛇足1>
タイトルのdele。
英単語の delete から派生したものですね。
delete の発音を、どちらかというと「デリート」(「デュリート」に近いですが、日本語っぽく書くと「デリート」)という感じで覚えていたので、dele に「ディーリー」とふってあって「あれっ」と思ったりもしましたが、発音記号的には弱母音なのでデだろうと、デュだろうと、ディだろうと、どうとでも聞こえますね。多数派はディーリー(あるいはディリー)。今後気をつけるようにします!

<蛇足2>
「大手ゼネコンの大堂建設で取締役。その後、相談役まで務めた人だ。」(79ページ)
とあります。取締役、となっていますが、常務や専務までいったとすると常務取締役、専務取締役というでしょうから、平取止まりだったということでしょう。
これも会社によって違うかもしれませんが、平取が相談役になるって、通例なんでしょうか? 感覚的に相談役ってもっと偉くならないと就けないポジションではないかと思うんですが...



タグ:dele 本多孝好
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