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猫入りチョコレート事件 [日本の作家 は行]


(P[ふ]3-1)猫入りチョコレート事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[ふ]3-1)猫入りチョコレート事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 藤野 恵美
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
横暴な編集長にこき使われている弱小タウン誌『え~すみか』のバイト編集者・真島は、取材先の猫カフェで、“密室”から従業猫の一匹が消えた事件に遭遇する。猫を捜す真島の前に現れたのはチャイナドレスに身を包んだ謎の美女。書道家の胡蝶と名乗る彼女は、中国の思想家・老子の言葉を引用し、どんな事件もたちどころに解決してしまう名探偵だった――!
ハルさん』の著者が贈る、ほのぼのユーモアミステリー。


読了本落穂拾いです。
手元の記録によると2017年7月に読んでいます。

藤野恵美という作者は、「ハルさん」 (創元推理文庫)が本屋さんでどーんと大きく展開されていて以前から気になっていましたが、ミステリ味が薄そうな気がしてなかなか手にとらずにいたところ、タイトルが「猫入りチョコレート事件」ときたら、レーベルがポプラ文庫ピュアフルでジュブナイルだろうとなんだろうと、手にとらずにはいられません。しかも、続巻のタイトルが「老子収集狂事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)

で、その「猫入りチョコレート事件」ですが、タイトルのネタ元である「毒入りチョコレート事件」 (創元推理文庫)ばりの多重解決ものか、と思ったら、短編集(連作集)でした。
収録作品は
「店でいちばんかわいい猫」
「幻の特製蕎麦」
「オフ会で死んだ男」
「ヒーローの研究」
「猫入りチョコレート事件」
の5つ。

「店でいちばんかわいい猫」はリタ・メイ・ブラウン「町でいちばん賢い猫」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「幻の特製蕎麦」はジョン・ダニング「幻の特装本」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「オフ会で死んだ男」はクリスティの「教会で死んだ男」 (ハヤカワクリスティー文庫)
「ヒーローの研究」は「緋色の研究」 (光文社文庫)
をそれぞれ意識しているのでしょうね。
特にだからといって内容が元の作品にちなんでいるわけではなさそうですが。

作者もあとがきで「少しでも朗らかな気持ちになり、くすりと笑っていただけたなら幸いです」と書いておられますが、肩の凝らない軽ミステリを目指した作品です。
老子の言葉は引用されていますが、まあ強引というか無理筋というか、飛躍を楽しむんでしょうね。
謎解きは他愛もないといっても失礼には当たらないのではないかと思いますが、ちょっとした謎を解くと、逆に探偵役である胡蝶先生の謎が深まっていく、という構図が楽しいですね。
続巻の「老子収集狂事件」 で伏線が回収される仕組みです。

<蛇足1>
「好きな歌 乾いた大地。嫌いな歌 濡れた髪のLonely」(203ページ)
「乾いた大地」の方は知りませんが、「濡れた髪のLonely」は知っています。この後段で説明されますが池田聡の曲ですね。
嫌いな歌、かぁ。ぼくは割と好きです。

<蛇足2>
「胡蝶先生はメニューを受け取ると、ひややかな視線で僕を見た。
 それから、懐からすっと筆を取り出して、小皿に突っ込む。
 筆先に、ギョウザのタレが吸い込まれていく。」(209ページ)
謎解きのためとはいえ、食べ物を粗末にしてはいけません。老子に叱られますよ。




タグ:藤野恵美
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