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映画:ゴヤの名画と優しい泥棒 [映画]

ゴヤの名画と優しい泥棒.jpg


ミステリだけではなく映画の感想もぼちぼち書いてきたのですが、今回の感想が映画の感想101回目となります。
映画「ゴヤの名画と優しい泥棒」の感想です。

シネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
1961年にイギリス・ロンドンのナショナル・ギャラリーで起きた絵画盗難事件に基づくコメディー。60歳のタクシー運転手が、盗んだ絵画を人質にイギリス政府に身代金を要求した事件の真相を描く。監督は『ノッティングヒルの恋人』などのロジャー・ミッシェル。主人公を『アイリス』などのジム・ブロードベント、彼の妻を『クィーン』などのヘレン・ミレン、彼らの息子を『ダンケルク』などのフィオン・ホワイトヘッドが演じるほか、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グードらが出演する。

---- あらすじ ----
1961年、イギリス・ロンドンにある美術館ナショナル・ギャラリーで、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤの絵画「ウェリントン公爵」の盗難事件が起きる。犯人である60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)は、絵画を人質に政府に対して身代金を要求する。テレビが娯楽の大半を占めていた当時、彼は絵画の身代金を寄付して公共放送BBCの受信料を無料にし、孤独な高齢者たちの生活を救おうと犯行に及んだのだった。


原題は"THE DUKE"。
公爵、というわけで、すなわちナショナル・ギャラリーから盗まれた絵画を指します。
このまま訳しても日本の観客にはさっぱりということで、ゴヤの名画となったのでしょうが、その後ろの「優しい泥棒」というのがいまいちですね。

このところ偶々なのでしょうが、実話をベースにした映画をいくつか観ました。観た順にいうと、
「クーリエ 最高機密の運び屋」(感想ページはこちら
「最後の決闘裁判」(感想ページはこちら
「ハウス・オブ・グッチ」(感想ページはこちら
「シルクロード.com 史上最大の闇サイト」(感想ページはこちら
「オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-」(感想ページはこちら
そこにこの「ゴヤの名画と優しい泥棒」が加わったわけですが、これら6作品の中では、「ゴヤの名画と優しい泥棒」がダントツの1位です。

冒頭から、BBCの受信料を払わないと主張している主人公が描かれます。
BBCの受信料と訳されていますが、TV License と言われるもので、TVを持つと払わなければならない=TV設置料的にとらえていましたが、調べてみると視聴料が正しいようです。
TVから出る電波?をキャッチする機械を車で積んで巡回しており、取り締まりは結構強烈です。
もちろん、在住中は払ってましたよ(笑)。
なので、BBCが映らないから払わない! と主人公が主張しているのを観てそうだったかなぁと思いました。とはいえ、この受信料がBBCのメインの収入ですから、そういう規定になっている(あるいは、なっていた)可能性はありそうです。

さておき、この地味なおじさんと一家の生活が淡々と描かれていきます。
退役軍人や老人世帯などの受信料を無料にしろという運動を展開しています。
妻をヘレン・ミレンが演じていまして、すごくいい感じです。この奥さん、旦那が旦那だけに頑固者っぽく見えるだけで、いたって普通の女性です。
もっとも二人には、幼いころに自転車事故で娘を亡くした、という事実が横たわっており、確執につながっています。
頼りなさそうな息子役をフィオン・ホワイトヘッドが演じています。この役者さんクリストファー・ノーラン監督「ダンケルク」(感想ページはこちら。そういえばこの映画も実話ベースでしたね)で抜擢された俳優さんなんですね。

海外に流出しそうになったゴヤの名画「ウェリントン公爵」を巨額で買い戻したという報道に憤ってみたりします。
物語が急展開するのは、ナショナル・ギャラリーで展示されていた「ウェリントン公爵」が盗まれてから。
ヘレン・ミレンに絵が見つからないように、あたふたするおじさんと息子(笑)。

紆余曲折の末、おじさんは絵をナショナル・ギャラリーに返しに行きます。
そしておじさんを被告人とした裁判がはじまる......
ここからがこの作品の真骨頂なのでしょう。
前半の地味な生活が、ここへ来てレバレッジを効かして迫ってきます。

途中で、さらっと扱われる事項があるのですが、ここにいたく感心しました。感銘を受けた、といってもいい。感服。
別の人が手掛けたら、大見得を切るような気もするところを、あくまでもさりげなく、さらっと進めていく。
素晴らしい。ステキです。
実はそこまでの間に妙な違和感というか、居心地の悪さを感じていたのですが、このくだりで解消。これが実話というのも納得の部分でもあります。
なんていい映画なんでしょうか。

ただ、この映画人気はあるのでしょうか? 心配です。
派手な大作の間に埋もれてしまわないでしょうか......

そうそう、いつもは映画のHPにあらすじがあれば、上の方で引用するのですが、この映画のHPのあらすじはダメです。
映画を観る前には読まないようにしてください。
後の記録のために、下に引用しておきます。念のため、鑑賞の妨げとなり問題と思う部分の字の色を変えておくことにします。
事件に秘められた優しい嘘と、驚きの真実とは――
世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。当時、イギリス中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは−!?




製作年:2020年
製作国:イギリス
原題:THE DUKE
監督:ロジャー・ミッシェル
時間:95分




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