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泣き童子 三島屋変調百物語参之続 [日本の作家 宮部みゆき]


泣き童子 三島屋変調百物語参之続 (角川文庫)

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 (角川文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
三島屋伊兵衛の姪・おちか一人が聞いては聞き捨てる変わり百物語が始まって一年。幼なじみとの祝言をひかえた娘や田舎から江戸へ来た武士など様々な客から不思議な話を聞く中で、おちかの心の傷も癒えつつあった。ある日、三島屋を骸骨のように痩せた男が訪れ「話が終わったら人を呼んでほしい」と願う。男が語り始めたのは、ある人物の前でだけ泣きやまぬ童子の話。童子に隠された恐ろしき秘密とは──三島屋シリーズ第三弾!


「おそろし 三島屋変調百物語事始」 (角川文庫)
「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」 (角川文庫)(感想ページはこちら
「泣き童子 三島屋変調百物語参之続」 (角川文庫)
「三鬼 三島屋変調百物語四之続」 (角川文庫)
「あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続」 (角川文庫)
「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」
「魂手形 三島屋変調百物語七之続」
と、今のところ第7巻まで出ているシリーズの第3弾。
第2巻「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」
を読んだのが2011年7月ですから、我ながらなんとものんびりベースで読んでいるものです。

三島屋伊兵衛の姪・おちかが、いろいろな人の不思議な話を聞いていく、という趣向で題して変調百物語というわけで、この「泣き童子 三島屋変調百物語参之続」には、
第一話「魂取の池」
第二話「くりから御殿」
第三話「泣き童子」
第四話「小雪舞う日の怪談語り」
第五話「まぐる笛」
第六話「節気顔」
の六話収録。

読んでみて驚いたのが、それぞれの話の内容がバラエティに富んでいること。
百物語というと怪談を連想しますが、怪談とは言い切れない話もあります。
解説からの孫引きになりますが、作者自身が
「若い娘が恋バナをしに来るわ、人殺しが来るわ、怪獣は出るわ……。これまで以上に、やりたい放題やらせていただいた感じです。」
と語っていらっしゃるようです。
このバラエティぶりは、このシリーズにとって大きいと思います。
なにより、おちかの成長物語としての側面があるこのシリーズですから、怪談だけにとどまらず、いろいろと話の幅が拡がっていくことは絶大なプラスであると思います。

また、第四話「小雪舞う日の怪談語り」では、いつもの三島屋の黒白の間で話を聞くのではなく、怪談語りの会に出かけたりもします。
これは、おちかに三島屋の外のものを見せるというこの物語上の要請もあったのだとは思いますが、ひょっとしたら、おちかのポジションを、単なるお話の聞き役から、何らかの解決役のような能動的なポジションに変えていく前触れなのかもしれません(シリーズの先を読んでいませんので、まったくの見当はずれの可能性大ですが)。

本書で一番怖い怪談は、表題作である第三話「泣き童子」だと感じました。

シリーズの今後を追いかけていきます!



<蛇足1>
「巷の不思議、人の業、とりどりな人の生き様を聞き知って、それらの話から糸を縒り出し、おちかが自分の魂を繕うことができるよう計らってやった方がいいのではないか」(13ページ)
”生き様” という表現は、すっかり定着してしまったのですね......

<蛇足2>
第二話「泣き童子」に出てくる、三島屋で霜月(子の月)の最初の子の日に行われる<ねずみ祭り>が興味深いですね。
ここでの情景を指して「ねずみ鳴き」とされているのですが、枕草子の影響で一般には「ねず鳴き」なのではと思っていましたが、赤城毅「書物法廷」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)にも出てきましたし、「ねずみ鳴き」の方が一般的なのでしょうね。認識を改めねば。

<蛇足3>
「一人客は座の雰囲気を味わうようにまわりを見回したり、供された茶を静かに喫したりしている。」
「話のなかに出てくる場所や人の名前を伏せたり、変えてもいいことになっている。」(197ページ)
同じページのなかに、「~たり、~たり」と正しく使われている箇所と、崩れてしまっている箇所の両方があります。ちょっと不思議です。

<蛇足4>
「あれ以来ずっと空けたままの黒白の間に、次の語り手をお招きしよう。」(302ページ)
おちかの決意表明(?) なのですが、あれ? この部屋、主人の囲碁でも使うのではなかったかな?
おちかの百物語専用になったんでしたっけ?
また、客を招かずにいた状態を「空けたまま」というのでしょうか? むしろ逆に閉じたまま?

<蛇足5>
「汁粉の匂いと、汁粉にする前の小豆を煮る匂いは別物ですよ」(303ページ)
なにわがまま言っているんだ、このじじい(失礼っ)、と思うと同時に、それはそうかもしれないな、とも思わせるセリフでした。
「寿司は好きだが、寿司飯をこしらえているときの匂いが嫌いな人はおります。蕎麦が好きでも、蕎麦を茹でている湯気の匂いは駄目だという人もおります」
と続きます。


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