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奇商クラブ [海外の作家 た行]


奇商クラブ【新訳版】 (創元推理文庫)

奇商クラブ【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: G.K.チェスタトン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
巨大な蜂の巣のようなロンドンの街路の中で「奇商クラブ」は扉を開かれる時を待っている――この風変わりな秘密結社は、前例のない独創的な商いによって活計を立てていることが入会の条件となる。突然の狂気によって公職を退いた元法曹家のバジル・グラントが遭遇する、「奇商クラブ」に関する不可思議な謎。巨匠が「ブラウン神父」シリーズに先駆けて物した奇譚六篇を新訳で贈る。


チェスタトンの感想を書くのは、「木曜日だった男 一つの悪夢」 (光文社古典新訳文庫)(感想ページはこちら)以来ですね。
本書も南條竹則さんによる新訳です。

旧訳で昔読んでいますが、楽しめなかった記憶。
今回はちゃんと楽しめました。新訳さまさまです。

「ブラウン少佐の途轍もない冒険」
「赫々たる名声の傷ましき失墜」
「牧師さんがやって来た恐るべき理由」
「家宅周旋人の突飛な投資」
「チャド教授の目を惹く行動」
「老婦人の風変わりな幽棲」
の6編収録の短編集。
”奇商クラブ” という「何か新しくて変わった金儲けの方法を発明した人間だけからなる結社」にふさわしい、新奇な職業を集めています。

”奇商クラブ” の参加資格?は
自分が生計を立てる方法を見つけていなければならない
です。
そして
第一に、それは既存の商売の単なる応用とか変種とかであってはいけない
第二に、その商売は純然たる商業的収入源、それを発明した人間の生計の資でなければならない。

この視点で見ると、たとえば「家宅周旋人の突飛な投資」など ”奇商クラブ” たる資格を満たしていないんじゃないかと思われますし、「チャド教授の目を惹く行動」は職業ではないですし、さすがのチェスタトンもこの趣向を満たすアイデアをそんなにたくさんは思いつけなかったのでしょうね。

それでも「ブラウン少佐の途轍もない冒険」あたりはニーズはそんなになさそうな気もするけれど、楽しい職業のように思いましたし、「赫々たる名声の傷ましき失墜」や「牧師さんがやって来た恐るべき理由」あたりは実際に職業として成立しそうな気がします(笑)。
そして最後の「老婦人の風変わりな幽棲」では、いかにもチェスタトンらしいというか、いや逆にストレートすぎるというべきか、奇商クラブの内幕を垣間見せてくれます。

チェスタトンも近年南條竹則さんにより新訳がわりと出ていて重畳ですね。
読み進んでいきたいです。
(そういえば、ちくま文庫のブラウン神父の新訳も読んだのに感想を書いていませんね......ただ続巻が途絶えているので気になっています。残りも新訳してほしいです。)


<蛇足1>
「彼が黒体文字の二折り判本の山のうしろにしまっている贅沢なバーガンディーをいっぱいやっていた。」(17ページ)
バーガンディーとあるのは新訳ならではだと思いますが、未だブルゴーニュの方が一般的ではないでしょうか?

<蛇足2>
「我々四人はたちまち拱道(きょうどう)の下で身をすくめ、硬くなったが」(37ページ)
拱道の意味がわからず調べました。
アーチ道と出ます。??
アーチ型の門、アーチのある通路という説明もありました。なるほど。

<蛇足3>
「とくに力強い、奇警なものだと思いますよ。」(47ページ)
今度は ”奇警” がわかりません。文脈から見当はつくのですが、「思いもよらない奇抜なこと。」ということのようですね。

<蛇足4>
「こうした習慣への干渉に痛烈な抗義を加えていた。」(164ページ)
抗義とありますが、これは抗議の誤植でしょうか?





原題:The Club of Queer Trades
著者:G. K. Chesterton
刊行:1905年
訳者:南條竹則






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