蛇棺葬 [日本の作家 三津田信三]
<カバー裏あらすじ>
幼い頃、引き取られた百巳(ひゃくみ)家で蛇神を祀る奇習と怪異の只中に“私”は過ごす。成長した“私”は訳あって再びその地を訪れる。開かずの離れ“百蛇堂”での葬送百儀礼で何が起こるのか? もうひとつの怪異長編『百蛇堂 怪談作家の語る話』へと繋がるホラー&ミステリ長編。著者の創る謎と怪異の世界。全面改稿版。
2023年9月に読んだ8作目(10冊目)の本です。
三津田信三「蛇棺葬」 (講談社文庫)
「百蛇堂 怪談作家の語る話」 (講談社文庫)とセットの作品です。
因襲に満ちた田舎の旧家で起こる怪異。
主人公である語り手の少年時代の目と、大人になってからの目を通して語られるところがミソなのでしょう。
タイトルからもわかるように、蛇を思わせるイメージにあふれた恐怖譚です。
ただ作品中にはっきりとは書かれていなかったように思います。口にすることがタブーに近いということなのかな、と感じました(少年時代のエピソードにそれに近いことがあらわれます)。
ミステリではなく、ホラーの方に振り切っていまして、怪しい現象はかずかず起こるものの、その正体が何なのかは明かされません。
この ”雰囲気” が怖い。なんだかぬめぬめとした恐怖感。
いくら伝統だといっても、こんなお葬式は嫌だなぁ。
はっきりと書かれないうえに、語り口が冗長なものに設定されているので(なにしろ目次に「長い長い男の話はいつまでも続いた」とあるくらいですから)、焦点が定まらないもどかしさがあると同時に、それが恐ろしさを引き立てているような。
「蛇棺葬」を読むにあたって、続く「百蛇堂 怪談作家の語る話」 (講談社文庫)を続けて読もうと思っていましたが、ちょっと怖いので間をおこうと思います。
<蛇足>
さらっと書かれているのですが、友人が周りから忌避されていることに気づき、民(百巳家の使用人?)に問うシーンが印象的でした。
「唯な、坊。そんなもんで人様の値打ちは決まらんけ。坊が砂川君をええ友達や思うたら、それが正しいけ。でもな、大人の世界はそういう訳にはいかんけ。分かるけ、坊」(185ページ)
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