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盗みは忘却の彼方に [日本の作家 赤川次郎]


盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/03/20
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
旅番組の撮影で見知らぬ町に取り残されてしまった、崖っぷちタレントの久保田杏。追い打ちをかけるように雨が降り始め、森の中の小屋へと駆けこんだ。「このままじゃ、風邪ひいちゃう」と呟いた瞬間、ドアを開けて入ってきたのは三人の強盗犯! 杏はとっさに隠れるも、クシャミをして密談中の男たちに見つかってしまう。「二つに一つだ。ここで死ぬか仲間になるか」──。彼女は必死の演技で強盗犯の手助けをすることに!? 大人気シリーズ「夫は泥棒、妻は刑事」第二十四弾は、淳一と真弓が一億円強奪事件に立ち向かう!


2023年9月に読んだ12作目(14冊目)で、最後の本です。
「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第24弾。「盗みは忘却の彼方に」 (トクマノベルズ)

このところ「三毛猫ホームズと炎の天使」 (KAPPA NOVELS)(感想ページはこちら)、「花嫁純愛録」 (ジョイ・ノベルス)(感想ページはこちら)と立て続けにあまりにも現実的とは思えない内容にケチをつけてきましたが、この「盗みは忘却の彼方に」 に関しては、どれだけ現実離れしても同様のケチはつけません。なんといっても、夫は泥棒、妻は刑事、というのですから。
このシリーズはこれでいい、現実ではありえない話と割り切って楽しむシリーズだと理解しています。
(その意味では、カバー裏に「現実にもこんな夫婦がいたら面白いのに、と誰もが思う」と書いてあるのは少々言い過ぎかと思いますが、エンターテイメントとしてはいいのでしょうね)

冒頭強盗事件に巻き込まれるタレント杏というところから非現実的なのですが、その後の展開はそれ以上。
そんなことあるかよ! と突っ込みながらも勢いのある展開を楽しみます。
そんな杏があれよあれよという間にTVスターになっていくという赤川次郎好みの展開。
強盗仲間の一人もひょんなことからスターへの道を歩み始める......

杏たちがとてもいい人間のように描かれているので、読者としては幸せになればいいな、と願いながら読むことになるわけですが、それでも罪を犯したことは事実。
話の途中を楽しみながらも、どういうエンディングになるのだろうと大きな気がかり。
いつもの赤川次郎パターンだと、しっかり償うべき罪は償って、となりそうですが......
実際にどう落ち着いたか(あるいは落ち着かなかったか)は読んでいただくべきかと思いますが、結構思い切ったラストになっているように思いました。
タイトルもなかなか含蓄深いです。

ひょっとしたら少しずつではありますが、5月に感想を書いた「たそがれの侵入者」 (フタバノベルズ)(感想ページはこちら)といい、赤川次郎の作風が変わりつつあるのかもしれません。



<蛇足1>
「しかし、照美の身を守るのは、淳一の泥棒としてのプライドだったのだ……」(67ページ)
人の身を犯罪組織の手から守るのが泥棒のプライドというのはわかりにくいですが(泥棒は別にボディガードというわけではないし、照美は淳一の仲間というわけでもないので)、「お互い、闇の世界で仕事をしている身だぞ。明るい昼の世界で働いている人を脅したり傷つけたりするな」(66ページ)というセリフがその前にあるのでこの文脈で理解するのでしょうね。

<蛇足2>
「コーヒーカップを手で弾き飛ばすと、カップの受け皿をつかんで、散弾銃の男へと投げつけたのだ。更は男の首を横から直撃した。
 男は痛みに呻き声を上げてよろけると、引金を引いていた。正面のガラス窓にボカッと三十センチほどの直径の穴があいた。」(99ページ)
散弾銃なのに穴が一つ? と思いましたが、一発弾を発射する散弾銃もあるのですね。





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