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帝都東京・隠された地下網の秘密 [日本の作家 あ行]


帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮文庫)

帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮文庫)

  • 作者: 秋庭 俊
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
我々は、果たして東京の真実の姿を知っているのか? 眼に見えぬ地下網の実態は、「帝都」時代から厚いベールに包まれたままではないのか? 限られた資料を細大漏らさず収集、そして取材、分析することによって、地図には記載されない地下鉄の存在が炙り出され、あるはずのない大地下網の存在が明らかになってゆく。我々に残された最後にして最大の謎に挑む、ノンフィクションの傑作。

尊敬する先輩に勧められ文庫発売後すぐに買ったのですが、いままで放置していました--ミステリじゃないと読む優先順位が著しく下がってしまうのです、ぼくの場合。
普通に売られている東京の地図で、地下鉄丸ノ内線のルートが100m近くも食い違っている、など7つの謎を列挙した序章から著者が資料を集めて真相(?)を推察していくのを描いています。
あらすじではノンフィクション、と書いてあります。きちんとした証拠があるわけではなく状況証拠ばかりで(厳しい人は状況証拠にもなり得ていないと言われると思います)、なんとなく自説に都合のいいことばかり並べたんじゃないかなという気がぬぐえないので、隠された真実を暴くノンフィクションとしての精度はあまり高くないように思いました。
なによりも、戦前・戦後を通して、政府がそのことを隠し通してきた理由がわからないのが最大の難点だと思います。隠しておく必要ないんじゃないでしょうか?
説明用に地図や図面がいっぱい引用されているのですが、それぞれについての説明が不親切で作者は読みとれても読者は読みとれないことだらけです。--たとえば、P147の地図はもともとわかりにくい図ではありますが作者の言いたいことは何一つ読みとれませんでした。P233の地図など、本文中にはA1とかB2とか記載があるのに、地図にはないので、どこのことを説明しているのかさっぱりわかりません-- また、読者が東京の地理を知悉していることを前提にしたかのような書きぶり(や地図の抜粋)で、すっきりしないことおびただしい。
話の進み具合もいきあたりばっかりで筋道が明確ではありませんし、序章の7つの謎も、きちんと解明できたと言えません。構成を練り直せばよかったのに、と思います。

とマイナス面を並べましたが、状況証拠でもかなりの積み上がりがありますし、日ごろ乗っている地下鉄や通っている地下道について、指摘されてみるとあらためて不思議だなぁと思うところが、説明づけられつながっていくのを読むのは非常に楽しい経験でした。真実を追究するノンフィクションとしては欠けていても、話のネタとしてはきわめていいと思います。
作者の立てた仮説は、作者には失礼かもしれませんが、一種のファンタジー(ダーク・ファンタジーかもしれませんが)としてすごくおもしろいとおもいました。
乗り換えが不便だなあ、とか、上がったり下がったり面倒だなあと思っていた地下鉄の駅も、今後は「ひょっとしてここに隠された真実があるのか!?」なんて思いながら通ると楽しくなるような気がします。なにより、日常の世界の下に、隠された別の世界が広がっていると想像することは、なんとなく心弾むものです。
今度休みの日にでも、地下鉄とトンネルを見に出かけてみようと思いました。

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