人魚は空に還る [日本の作家 ま行]
<裏表紙あらすじ>
富豪の夫人の元に売られてゆくことが決まった浅草の見世物小屋の人魚が、最後に口にした願いは観覧車へ乗ることだった。だが客車が頂上に辿りついたとき、人魚は泡となって消えてしまい――。心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年が贈る帝都探偵物語。明治の世に生きる彼らの交流をあたたかに描いた、新鋭の人情味あふれる作品集第一弾。表題作を含む五話収録。
非常に印象的な表紙ですね。
明治を舞台にした連作で、時代色が出ているところが〇です。また、天才絵師有村礼と雑誌記者里見高広の組み合わせなので絵師が探偵かとおもいきや、名探偵は雑誌記者の方、というのもおもしろいポイントですね。
マンガのような人物設定が、かえって明治を感じさせてくれているように思います。
ミステリ的には小粒な作品集ですが、異質なものを結び付け、さらに角度を変えてみせることで意外感を演出する方法は、東京創元社からデビューする新人らしく気が効いていると感じました。
そんななか表題作の消失トリック(?)は豪快です。その豪快なトリックが、いとも美しい舞台を演出しているのですから、落差がたまりません。観覧車の頂上で消える人魚。そして降ってくるシャボン玉。ステキでしょう??
礼と高広の関係が、ボーイズラブを匂わせるようなところがあるのが少し気になりますが (とはいっても、そういうシーンはありません)、怪盗ロータスなんていういかした盗賊も出てきていい感じなので、シリーズの今後にも期待することにします。
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