かばん屋の相続 [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに? 表題作他五編収録。
テレビドラマ化されて超人気となった半沢直樹シリーズ(「オレたちバブル入行組」 (文春文庫)、「オレたち花のバブル組」 (文春文庫)、「ロスジェネの逆襲」(ダイヤモンド社))で一躍、押しも押されもせぬ流行作家となった池井戸潤の文庫オリジナル短編集です。
主人公はいずれの作品も銀行員ですが、バラエティに富んだ内容となっています。
十年前に貸金を断った取引先社長のその後を確かめる「十年目のクリスマス」、融資を断ったにも関わらず資金不足を切り抜けた取引先の裏のからくりを見抜く「セールストーク」、支店内の手形紛失事件を描く「手形の行方」、資金繰りが苦しい会社の社長の半生を聞き、必死で支えようとする若手銀行員の物語「芥のごとく」、希望の仕事が叶えられず十年たった銀行員に人生の転機が訪れる「妻の元カレ」、そして背表紙にあらすじが書かれている表題作。
ひとくちに銀行といっても、さまざまな切り口があるんだなぁ、と作者の引き出しの多さに感心します。
ただ、個々の作品自体は、ちょっと食い足りないですね。
たとえば、表題作。裏表紙のあらすじだけで、物語の行く先を想像する人は結構いると思いますが、その想像通りの着地なんです。
意外性がない。
ミステリファンとしては、もうひとひねりも、ふたひねりもしてほしいところ。
一方で、そのおかげで、善玉、悪玉がくっきりしておりまして、勧善懲悪のストーリーが際立ちます。
半沢直樹シリーズもそうですが、そのわかりやすさ、親しみやすさを楽しむべき作家なのかもしれませんね。
タグ:池井戸潤
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