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舞田ひとみ、ダンスときどき探偵 [日本の作家 あ行]


舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (光文社文庫)

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (光文社文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/07/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
焼け跡から金貸しの老婆の死体が発見された。体には十数ヵ所の刺し傷があり、焼け残った金庫からはお金も債務者の記録も消えていた! 事件を捜査する浜倉中央署の刑事・舞田歳三(まいだとしみ)。彼にはゲームとダンスが好きな11歳の姪・ひとみがいた。行き詰まった事件の謎を、彼女の何気ない言葉が解決へと導く。キャラクターの魅力と本格推理の醍醐味が詰まった傑作推理小説。

歌野晶午の作品なので、無条件に「買い」ということで、文庫化されたら即買ったんですが、この「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」に関しては実は、あまり気乗りしなかったんです。
というのも、タイトルやあらすじを見ていただくと、どうも探偵役が11歳の少女。で、親戚の刑事を助けて事件を解決する、というパターンに見えます。天才少女名探偵、というところでしょうか。
こういうパターンの作品、世の中にいっぱいあります。
正直、歌野晶午が書かなくてもいいのに、なんて考えたのです。こんな世間に溢れた平凡な設定の作品なんか書かずに、歌野晶午らしい捻った素敵な作品を書いてくれれば、と。

ところが第1話 「黒こげおばあさん、殺したのはだあれ?」 を読むとちょっと様子が違いました。
あらすじも、よく見返すと微妙な書き方がしてあります。
「行き詰まった事件の謎を、彼女の何気ない言葉が解決へと導く」
彼女が解決する、のではありません。彼女の言葉が解決へ導く、なのです。
つまり、舞田ひとみは事件を推理し、解決するのではなく、舞田ひとみが放つせりふに触発されて、舞田歳三が推理して解決するんです。
なので、タイトルには若干「偽りあり」と言わざるをえませんが、個人的にはかえってその方がよかった。
と同時に、これでシリーズを続けるのは大変だろうなぁ、と思いました。
というのも、事件と直接的に関係がなかったりする会話から毎回毎回ヒントを得る、というのはその結び付け方が難しいと思うからです。
ということで、俄然、このシリーズを読む興味は、事件の謎そのものもそうですが、ひとみのせりふと解決の結び付け方、になりました。双方の距離感が遠い方がおもしろい。それでいて、あまりに遠いと「いくらなんでもそれで解決にはたどり着かないだろう」と感じられて困ってしまう。この点からも、構想が難しい連作です。
幸い、続巻「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」 (光文社文庫)も出ており、シリーズは順調なようです。

11歳の少女を探偵にしてしまうと、さすがに子どもに推理させるのはどうか、というような内容の事件は扱うことができません。現実には子どもの目に触れさせたくないような事件が溢れていても、それに直面させるのは酷だと読者として思ってしまいますし、直面しても大人の事情を推理させるのは無理を感じてしまいます。
ところが、本書の設定だと、そういった事件でも扱うことができるようになります。
その象徴的な作品として、第4話の「いいおじさん? わるいおじさん?」があります。
これがいちばんおもしろかったです。ひとみとのやりとりから真相への跳躍ぶりも抜群でした。

軽めの作品に仕上がっていますが、さすが歌野晶午と思える充実感でした。
「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」 (光文社文庫)にも大きく期待します。


<2021.09追記>
2021年2月に改題して、角川文庫から再文庫化されました。
「名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート」です。

名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/05/21
  • メディア: 文庫


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