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名探偵の証明 [日本の作家 あ行]


名探偵の証明

名探偵の証明

  • 作者: 市川 哲也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/10/11
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
そのめざましい活躍から、一九八〇年代には「新本格ブーム」までを招来した名探偵・屋敷啓次郎。
行く先々で事件に遭遇するものの、ほぼ十割の解決率を誇っていた。
しかし時は過ぎて現代、かつてのヒーローは老い、ひっそりと暮らす屋敷のもとを元相棒が訪ねてくる。
資産家一家に届いた脅迫状の謎をめぐり、アイドル探偵として今をときめく蜜柑花子と対決しようとの誘いだった。
人里離れた別荘で巻き起こる密室殺人、さらにその後の屋敷の姿を迫真の筆致で描いた本格長編。
選考委員絶賛の本格ミステリの新たな旗手、堂々デビュー。


ここから2月に読んだ本の感想になります。

単行本で、第23回鮎川哲也賞受賞作。
テーマは名探偵なのですが、ミステリとしては破格です。
名探偵の苦悩、というと普通、名探偵であること、名探偵であるが故の苦悩を指すのだと思いますが、この作品では、思考能力の低下により名探偵ではなくなってしまったことの苦悩、なのです。
これは新しい。
そしてそこからの復活を目指し、今脚光を浴びている名探偵・蜜柑花子と対決する...
なんだかわくわくしませんか?
しかもその蜜柑花子は、往年の名探偵・屋敷啓次郎の活躍を知っていて、屋敷のファンだという。なかなか泣かせる設定ではありませんか。
でも、残念ながら、対決の舞台となる事件が、こういってはなんですが、しょぼい。
対決も、なんだか尻すぼみ(もっとも名探偵二人に対決する気がないのだから当たり前ですが)。
ミステリとしての事件の謎やその仕掛けよりも、名探偵をめぐるエピソードやその仕掛けに重点があるわけです。破格というゆえんです。
最後に明かされる犯人像も意外でもなんでもなく、大方の読者の予想通りではないかと思うのですが、その犯人の設定自体が名探偵をめぐるエピソードとなって立ち上がってくるわけで、きちんと計算されたものだとわかります。おそらく、犯人を読者に見抜かれても構わなかったのです。名探偵の苦悩というテーマに、もっともふさわしい犯人を用意してみました、といって作者はこの作品を差し出してきたのでしょう。

トータルなコーディネイトがよく整った作品だと感じました。
これで対象となる事件をめぐるトリックや仕掛けに、もう一声、二声、新奇性とか驚きがあれば、言うことなしだったのですが、さすがにそれはないものねだりでしょうね。
意表をついた作品だったので、個人的には楽しめました。

でもね、一番愉しんだのは、裏表紙側の袖の作者紹介ですね。
「鮎川哲也と一文字違いの、新しい本格ミステリの書き手」
うーん、あやうく爆笑するところでした。
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