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神狩り [日本の作家 や行]


神狩り (ハヤカワ文庫JA)

神狩り (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/04/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
情報工学の天才、島津圭助は花崗岩石室に刻まれた謎の《古代文字》を調査中に落盤事故にあう。古代文字の解明に没頭した圭助は、それが人間には理解不能な構造を持つことをつきとめた。この言語を操るもの――それは神なのか。では、その意志とは? やがて、人間の営為を覆う神の悪意に気づいた圭助は、人類の未来をかけた壮大な戦いの渦にまきこまれてゆくのだった。


SFです。いやあ、懐かしい。子供の頃に読んだのですが(中学生くらいだったでしょうか?)、すごく惹きこまれた記憶があり、新版がでたのを機に読み返したくなって購入しました。
今では巨匠と呼びたくなるような、SFとミステリーで傑作を数多くものにしている山田正紀の1974年に発表デビュー作。
いやあ、今読むと、気負っていますねぇ。
タイトルからしてすごいですもんね。「神狩り」
闘う、とかじゃないんです。狩ろうというのですから。
「狩る」という動詞には、狩るものの方が狩られるものよりも上位にあるようなニュアンスを感じ取りませんか? 
そして、プロローグは、ヴィトゲンシュタインが登場し、バートランド・ラッセルからの手紙が届くのです。
いやあ、気負っています。でも、その気負いがなんだか好もしいですね。

言語からアプローチして神に到達する、というアイデアもおもしろいと思いました。
「論理記号を二つしか存在しない言葉」というのは覚えていませんでしたが、「関係代名詞が十三重以上に入り組んでいる」というのは覚えていました。
というのも
「人間は、関係代名詞が七重以上入り組んだ文章を理解することができない」
という部分が理解できなかったからです。今回も、ここはわかりませんでした。
“関係代名詞が入り組んだ”というのが、まずわかりません。単に関係代名詞を沢山使うだけなら、7つ以上でも余裕で理解できますよね? 英語の詩(?) に、これはジャックの建てた家うんぬん、というのがあって、それこそ中学校の英語の教科書にでも出てくるかもしれませんが、関係代名詞7つどころではありません。ただ、まあ、これは関係代名詞をどんどんつなげていっているだけで“入り組んだ”とは言えないのでしょう。とすると、入り組んだとは!?

あと今回読んで意外だったのはラスト。こういう終わり方でしたっけ?
なんだか中途半端なところで終わったというか、物語はこれからというところで終わったというか。
当時このラストに不満を持った記憶はありません。
逆にこの傑作を読むことができて、読み終わってもわくわくしていたと思います。

そうなんです。この「神狩り」 には、センス・オブ・ワンダーが溢れているのです。
今まで知らなかった世界、考えてもみなかった世界を、考えてもみなかった切り口で示してくれるのです。
言語からアプローチして神に到達する、というのもそうですし、〈神はわれわれに悪意を持っている〉というテーマもそうです。
読む人によって感じ取ることは違うかもしれませんが、世界が拡がっていく快感が、「神狩り」 にはあります。
本当に再読できてよかった。

タグ:山田正紀
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