埋み火 [日本の作家 た行]
<裏表紙あらすじ>
老人世帯でつづく不可解な火事。住人は“不幸な偶然が重なって”焼死した。調査を始めた若手消防士・大山雄大は、老人たちの哀しい過去と、裏で糸を引く意外な人物を突き止めるが……。雄大の胸のすくような活躍が閉塞した世の中に風穴を開ける、人気シリーズ第2弾!
「鎮火報」 (双葉文庫) に続くシリーズ第2弾です。
上に引用したあらすじを読んだだけで、真相に見当がつきそうな....(笑)。ミステリ色は抑え目です。
(とはいえ、ぼくが買った文庫本のこのあらすじもネタを明かしすぎですし、更に帯はひどいですねぇ。ミステリとしての真相部分をあっさり明かしてしまっています。いくらすぐに見抜けてしまうようなものでも、せめて帯くらいは隠しておいてもらわないと。)
日明恩の作品ではいつものことですが、読みやすい。情報量もかなり多く、したがって分厚くなってしまっていますが、読みやすいです。
しかし、雄大の一人称でつづられるのですが、今回は、まあ、説教くさいこと。もともとそういう要素のある作家ではありますが、この「埋み火」 はそれが全開というかなんというか、ちょっと度を超えていたような。年齢二十二の主人公雄大(たけひろ。通称が“ゆうだい”)が、馬鹿だと自覚している雄大が、いろいろと考えて繰り出してくるお説教は、ちょっと耐え難い領域に突入しかかっています。主人公のモノローグで延々と語られるので、ちっともストーリーに溶け込んでいません(ストーリー展開が契機にはなっていますが)。こういうのは全部だらだらと言葉にして語ってしまうのではなく、ストーリーやプロットをして語らしめよ、というのが小説だと思うのですが...
さておき、いつもの通り、お仕事小説としてはよくできていまして、消防士だって公務員で、普通の人間なんだ、という当たり前のことがきちんと(ただし饒舌に)書かれます。
ここの好感度が大なのと、すいすい読めるので、もう少し主張は抑え目にしていただければ...
とはいえたぶん今後も日明恩の作品は読み続けていくと思います。
タグ:日明恩
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