虎と月 [日本の作家 柳広司]
<裏表紙あらすじ>
父は虎になった。幼いぼくと母を残して。いつかは、ぼくも虎になるのだろうか……。父の変身の真相を探るため、少年は都へと旅に出た。行く先々で見聞きするすべてが謎解きの伏線。ラストの鮮やかなどんでん返し! 中島敦の名作「山月記」を、大胆な解釈で生まれ変わらせた、新感覚ミステリ。 読めば膝を打つこと請け合いです。
柳広司が今回選んだテーマは、中島敦の「山月記」 。
「山月記」 といったら、高校の国語で習ったなぁ、と遠い目で懐かしんでしまいますが、「山月記」 の謎を解明する(?) 話です。
あらすじでもお分かりのように、虎になってしまった父親・李徴の謎を息子が解き明かそうとする物語になっています。
もともとは理論社のミステリーYA! シリーズの1冊として刊行されたヤングアダルトものということもあってか、息子の一人称で語られますので、硬質で研ぎ澄まされたような「山月記」 の世界とは違い、かなりやわらかく、軽い感じに衣替えしているのがポイントでしょうか。
そもそも人間が虎になるという設定を、どう取り扱うのか、ミステリファンとしてはそこに注目して読み進むわけですが(本当に虎になったのだ、というファンタジックな使いにするのか、それとも「虎」とは何かの比喩なのか、お手並み拝見といった要素は少なからずあります)、十四歳の主人公の成長物語に絡んで、しっかり楽しめました。
謎解きの過程でも、漢詩が重要なキーとなるのも、意外と(?) 鬱陶しくなく、すっと頭に入ってきました。
名作をもとに、こうやっていろいろとひねって遊んでみせるって、贅沢ですよねぇ。
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