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製材所の秘密 [海外の作家 F・W・クロフツ]


製材所の秘密 (創元推理文庫)

製材所の秘密 (創元推理文庫)

  • 作者: F.W. クロフツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1979/02
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
シーモア・メリマンは商用の途次に立ち寄ったフランスの製材所でふと不審を覚え、帰国後クラブの喫煙室で披露に及んだ。聴き手の一人ヒラードが非常な興味を示し、密輸ではないか、調べようと提案、二人は休暇を利用して危険に満ちた探索に乗り出した。疑惑は深まるものの決定打を欠く膠着状況が意外な形で打ち破られるに至って、遂にメリマンは警視庁を訪れ経緯を明かすが……。

創元推理文庫の2012年の復刊フェアで復刊された作品です。
クロフツの作品でなんだか恒例となってしまった感がありますが、 表紙をめくったところにある扉に書かれたあらすじを引用します。
商用でフランスを旅行中のメリマンは奇妙なトラックに出合った。はじめに道ですれちがった時にはNo4のプレートをつけていたというのに数分後に立ち寄った製材所で見たときにはNo3のプレートを付けているではないか! そればかりか、この発見に運転手は敵意にみちた目で彼を見つめ、製材所の主任は顔を曇らせ、主任の娘は見るまに青ざめたのだ。ここではいったい何が行われているのか? <サンデー・タイムズ紙>のミステリ・ベスト・99にクロフツの作品としてはただ一作選ばれた名作の本邦初の完訳決定版!

両方を足し合わせると、作品のイメージをつかんでいただけると思います。
若干ネタバレ気味にはなりますが、製材所は何をしているのか? ということなので、今風にいうと、企業犯罪・経済犯罪を扱っています。
これ、本格ミステリで扱うのがとっても難しい犯罪だと思うのです。
素人がふとしたことで犯罪の端っこをつかみ捜査に乗り出す。そしてその後警察へ、という段取りは、クロフツにはよくあるパターンのようですが、この種の犯罪を警察が真っ先に気づくというのはありそうもないのでアマチュアを出発点にするのは向いている犯罪かもしれません。
そしてこの犯罪、非常に精緻というか、クロフツらしく細かく考えられていまして、よく考えたね、と誉めてあげたい。
一方で、この種の犯罪で殺人まで起こるのか? というと個人的には否定的で、そこはやはりこの作品でも気になるところではありますが、メリマンのロマンス(!) という要素を盛り込んで緩和しようとしています。
このロマンス部分、正直現在の視点で見ると、ばかばかしいような会話が繰り広げられちゃったりするのですが、そこも味があるというか、なんというか。
クロフツが実はバラエティに富んだ作家だったことを改めて確認しました。


原題:The Pit-Prop Syndicate
作者:Freeman Wills Crofts
刊行:1922年


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