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髑髏城 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ドイツ・ライン河畔に聳える奇城“髑髏城”。城の持ち主であった稀代の魔術師が謎の死を遂げてから十七年が経った。そして今、城を継いだ男が火だるまになって胸壁から転落、凄絶な最期を迎える。予審判事アンリ・バンコランは事件の捜査に乗り出すが、そこで彼は、好敵手フォン・アルンハイム男爵と邂逅を果たす――。古城を舞台に火花を散らす仏独二大名探偵の推理、新訳決定版。


2018年になって、2017年を振り返ってみたら、なんと2017年は、カーもクロフツもクリスティも読んでいない! 黄金時代の巨匠ではクイーンの新訳だけ読んでいました。これはいかん。
ということで(どういうこと?)、2018年にカー、クロフツ、クリスティを読むことにして、その準備運動として(?) 2016年2月に読んでいた「髑髏城」【新訳版】 (創元推理文庫)を引っ張り出して感想を書くところからはじめようと思いました。

バンコランが探偵役となる長編第三作です。
まずは髑髏城というのがいいではありませんか! (ばかばかしくて)
「髑髏城の名はだてじゃない。気色悪い建築の粋を凝らした館の正面は、眼窩や鼻や乱杭歯の顎骨にいたるまで巨大な髑髏そのままなんだ。しかも塔を両脇にひとつずつあしらい、一対の大耳になかなかうまく似せてある。さしずめ聞き耳立てて笑う悪魔ってとこかな」(23ページ)
「なだらかな山腹にかぶさる狭間胸壁付きの城壁。高さ百フィートはありそうだ。」「城壁の中ほどでされこうべの歯をかたどる中央胸壁の奥に巨大な石造の頭骨が控えている。」「髑髏の眼窩ふたつ。両脇におぞましい双塔の耳。」(34ページ)
わかったような、わからないような描写ですが、悪趣味な建築物であることがわかります。
舞台は、この髑髏城とその対岸にある夏別荘。
そこで、バンコランと宿敵(?) フォン・アルンハイム男爵の推理合戦が繰り広げられる...
もう、この舞台装置と設定だけでおなか一杯になりそうな楽しさです。

17年前の事件と現在の事件。
17年前が、走行中の列車から忽然と消えた大魔術師。現在の事件が、全身を炎に包まれ城(髑髏城)から転落した名俳優。
すごく派手な事件です。
城と対岸の別荘をいったりきたりするのも堂に入っていますし(さすが、カー)、細かな手がかりもちりばめられていて、狐と狸の化かし合いみたいな推理合戦ともども、雰囲気いっぱいの中、物語が繰り広げられます。
推理合戦が、二重の解決=どんでん返し、という形になっていて楽しいです。
バンコランも悪魔(メフィストフェレス)みたいながら、ちゃんと人間なんだぁと思わせてくれるラストまで、カーのサービス精神が縦横に発揮されている作品だと思いました。

あと、本書にはどうしても付け加えておきたい点があり、それは青崎有吾による解説です。
これがすばらしい。バンコランとアルンハイム男爵の推理合戦に、カーがそんな意図を秘めていただなんて...


<蛇足1>
「太い鼻の両脇にかっきりと法令線を刻み」(14ページ)
よく聞くほうれい線って、法令線と書くのですね、知りませんでした。
上に引用した部分の「かっきり」もそうですが、この訳者結構クラシックな日本語を駆使してくれて(新訳とは思えない!?)、楽しいです。
「才槌頭」(14ページ)
「小手で目をかばう」(42ページ) 小手ってこういう使い方するんだ...
「胸突き八丁のしんどい坂」(43ページ)
かと思えばくるみではなく「ウォールナット材の鏡板」(120ページ)。
また、「申し訳ございません」(73ページ)と言わせちゃったりもしていますし、「ほんのさわりだけなら構わんよ」(163ページ)と「さわり」の意味を間違っていたり、「百歩譲って」(185ページ)とものすごい量の譲歩をさせていたりもします。
古いんだか、新しいんだか、わかりませんね(笑)。

<蛇足2>
「なぜだかこの男は竿の先の猿を思わせるところがある。」(73ページ)
竿の先の猿って、なにかの言い回しでしょうか? ちょっと調べてみてもわかりませんでした。


原題:Castle Skull
著者:John Dickson Carr
刊行:1931年
訳者:和爾桃子




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