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リケコイ。 [日本の作家 喜多喜久]

リケコイ。 (集英社文庫)

リケコイ。 (集英社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/10/20
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
恋愛経験ゼロ。冴えない理系大学院生の森は、ある日突然恋に落ちた。相手は、卒業研究をするためにきた、黒髪メガネの年下リケジョ・羽生さん。ところが、好みド直球な彼女にはある重大な秘密が! 妄想と現実に身悶えながら、あの手この手でアプローチを仕掛けるが、ひたすら空回り。それでも諦めきれない……。どこまでも不器用で、思わず応援したくなる、歯がゆさ満載の青春ストーリー!


喜多喜久の本の感想を書くのは2017年6月3日の「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)(感想ページへのリンクはこちら)以来となります。
この間、
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
「研究公正局・二神冴希の査問 幻の論文と消えた研究者」 (宝島社文庫)
「アルパカ探偵、街を行く」 (幻冬舎文庫)
を読んでいるのですが、感想を書けませんでした。

さて、この「リケコイ。」 (集英社文庫)ですが、これまでの喜多喜久作品の中では最もミステリ味が薄い作品です。
そして個人的にはいちばんつまらなかった...

女性との接点の少ない理系男子に向けた恋愛指南、いや指南ではないですね、反面教師となるようなストーリー、という内容です。
卒業研究のために研究室にやってきた別の大学の眼鏡女子・羽生さんに恋に落ちた院生森。
森の造形はともかくとして、この羽生さんの造形がなかなかおもしろいです。こちらも恋愛経験のない(あるいは少ない)理系の女の子、とせずに、見かけと違ってわりと恋愛に手慣れた感じの設定。(ラストあたりでは、かなり強烈なことをやってくれてしまいます)
ということは、羽生さんにいろいろと森が手ほどきしてもらう話なのかな、と思いきや、まったく違う方向に進みます、というか、進みません。
同時に、不思議なことに羽生さん、魅力的に感じませんでした。
森が羽生さんの気を惹こう、思いを遂げたい、と思っていることはわかっても、森の目を通してさえ、さほど羽生さんが素晴らしいようには思えないんですよね...

また、森のやること、結構無茶苦茶です。いくら恋愛経験なくて、女性と話すのが苦手にしても、これはないなぁ。羽生さんがある程度手慣れている、あるいはこなれているおかげで、一気に破綻とまではいかないのですが...
一方で、森は高校の同窓会で再会した元同級生と、なんだかよくわからないけど、なんとなくいい感じっぽくなってきて...
はい、おそろしくウダウダ、ウダウダする話になります。しかも森のひとり芝居というか、空回り。

これ、応援したくなりますかねぇ?
個人的にはいつもほぼ無条件に主人公に肩入れする傾向があるんですが、この森くんに対しては最初のうちだけで愛想が尽きたというか、あまりのずれについていけなくなってしまいました。
しかも、この状況下、森が視点人物で「私」として語られるのは、かなりきついですね。

ミステリ色が薄いといいましたが、実際のところまったくミステリではありません。
全体的には森の視点で物語がつづられていくのですが、章の間に「原作者より、~~~なあなたへ」と題する断章(?)が挟み込まれていて、その原作者とは誰か(作中人物のうちの誰かであることは明かされています)というのがかろうじてミステリ的趣向を匂わせてくれるといえるかもしれません。
でも、ミステリ的趣向というほどのこともない。
これ、一発で誰かわかりますよねぇ...(作者=喜多喜久も隠す気はないでしょうが)

この原作者が書き記す「理系男子(あるいは女子も)が心に留めておくべき、非常に重要な恋愛の注意事項」というのをここに転記しておきます。
①外見で内面を推察し、それだけで相手を知った気になってはならない。
②恋愛への幻想は、なるべく早く捨てた方がよい。大抵の場合、それはあまりに幼稚すぎるからだ。
③告白の前に、相手に恋人がいるかどうかを確認すべし。
④あなたに優しくしてくれる、人当たりのいい異性には、ほぼ間違いなく恋人がいる。あるいは、いたことがある。
⑤精神の衝撃を和らげるために、いついかなる時も最悪を想定すべし。


<蛇足>
「そこは八帖ほどの広さで、長方形のテーブルの周りに~」(112ページ)
とあるのですが、これは八畳の間違いですよね。




タグ:喜多喜久
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